かすみ荘 - 雑文:たこやきが舟にのる
[もどりゅ]

010. 【たこやきが舟にのる】 (2000.12.15)

◇かすみの利用している最寄り駅に、最近、某チェーンのたこやき店がオープンした。さらに、今月下旬にはもう一店舗、別のチェーン店がオープンする。

◇一駅にたこやき屋が2店舗。これは多いのではないだろうか。オープン前に下調べをしなかったのだろうか。それともオープン間隔が少なかったゆえ、お互いの事を知らなかったのだろうか。かすみの知る限り、横浜駅には1店、武蔵小杉にも1店、新丸子にも1店、多いのは渋谷くらいではないだろうか。それとも知らないだけであるのかも知れない。駅を出ると、すべてのたこやきチェーンの店舗がある所が。もし、あったら降りてみたい。降りた瞬間、ソースの匂いが漂い、改札口を出ると、アルバイトが我先にと自店舗のサービス券を押し付け、たこやきプロムナードを抜けると、匂いだけでご飯が2杯はいけるという場所が。無いか、そんな駅は。

◇さてさて、上記の2店舗は店舗、なのである。たこやきは店舗以外でも購入する事が出来る。つまり露天の存在があるのだ。最寄り駅にはたこやきの屋台があり、少なくともここ十年は屋台をやっている。もちろん、店主は変わっているのだろうけど、いつも的屋のお兄ちゃんが店を出している。

◇的屋のお兄ちゃんからすれば、晴天の霹靂の様な事件ではないだろうか。日本は資本主義者会であり、各企業が競争しつつ、良い商品を生み出しているのであり、今までこれといった営業努力をせずとも商売敵が現れず、駅前にある唯一のたこやき屋であるという夢の様な条件に恵まれていたといえ、いつかは訪れる破局の時を迎え、お兄ちゃんもダメージから一刻も早く立ち直り、事後策を講じねばならない。

◇的屋のお兄ちゃんの使用している商売道具は、浅草はかっぱ橋商店街で購入可能な業務用たこやき機(東京近郊ではここで購入がオーソドックスだと思う)だが、店舗のそれは備え付けのものであり、たこやきの一粒サイズも大きい。つまり、たこやきの大きさでは店舗のそれが勝っているのであり、また、ネームバリューも名も知らぬ的屋より大型チェーンが勝っている。唯一の勝因は、地元に長いという事くらいではないだろうか。

◇あれこれ考えても仕方が無いので、最終的な問題?味?はどうなのか検証してみようと思い、いざいざと的屋のたこやきを購入しようとすると

舟にのっているのだった

◇昔、ほろ酔いのかすみが購入した時には透明なプラスティックの器で、きゅうくつに入っていたたこやき達がお舟にのっている。たこやきを数える時は一舟、二舟と呼ぶと大阪のたこやき屋のおばちゃんに聞いたのだが、その由来がこの舟型の経木なのである。たこやきが通常8個なのも、たこの足が8本だから、たこは海の生き物だから舟にのっているなどと聞かされつつおばちゃんのたこやきを食べた。つまるところ、的屋のたこやきから形だけでも舟にのった正統(なのか?)風たこやきに進化させたらしい。これは画期的な事なのではないだろうか。舟は包みにくいだろうし、今までの容器よりお高いのではないだろうか。一舟400円也にしめる原価の割合は知らないが、お兄ちゃんの大英断によって、たこやきは舟にのったのだ。とりあえず一舟購入し、その場を離脱。心はたこやきの味をチェックしたくて堪らないのだが、一応かすみの地元である。駅前の的屋の店先でたこやきを食べているところをご近所さんに見られたら、あそこのお嬢さんは二十歳をすぎて人前でたこやきなんか食べているようだから、お嫁の貰い手がないんだなどどあらぬ誤解を生むかも知れない。チェーン店のたこやきを購入した友人と某スーパーの前で落ち合い、半分づつたこやきを賞味したのだった。(折角なので大坂人の友人に付き合っていただいた)

◇やはり、的屋のたこやきは的屋の味がするし、チェーン店のたこやきはそこのチェーンの味がする。舟にのってようが、パックに入っていようが、そのままなのが真理なんだねぇと思いつつ、今月末オープンのたこやき屋がどんな風であるのかと思いを馳せた。

◇かすみが一番美味しいと思ったたこやきは大阪の北千里駅の近くにある、名も知らぬたこやき屋であるが、この記録が破られる事は無いに違いない。ことさらに思い出というものは美しく、たこやきの味ですら美化されているに違いないのだ。また、連れの一番たこやきは、死んだばあちゃんが自宅で作ってくれていたたこやきだそうで、故人がからんでいるのであれば、これはもう文句なく記録は破られまい。

◇結論として、味なんてものは好みによるだろうから、別にたこやきを検証しなくても良かったのであり、ただただ、的屋のお兄ちゃんの大英断にこちらが躍らされたのではないかと、悔しい思いを抱いたのでした。

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