かすみ荘 - 雑文:栗羊羹泥棒
[もどりゅ]

020. 【くりようかん泥棒】 (2001.02.21)

・竹風堂、小布施堂、桜井甘泉堂。堂といってもお寺さんでは無い。栗菓子の老舗である。栗かのこ、栗落雁、栗羊羹などをメインに、ふきよせ、ゼリー、アイス、最中などを展開している。

・沙羅家財閥は地方公務員の父の給料でまかなわれている。他に収入は無い。現在は子供らの生活費が加わっているが、しょせん地方公務員の生活である。家屋敷は50坪の土地に建っているし、他に不動産がある訳でも無し。日本人が好んで使う中流家庭(実際はこんなに中流がいる訳ないのにねぇ)なので、沙羅家財閥は赤貧洗うがごとくとは言わないが、日々それなりの生活をしている。ただし、異様にエンゲル係数が高い。

・とにかく、父と母が食べる、旅行、2点に固執しているのだ。蟹やら肉やら高級ひものやらを買って食べる。ケーキもよく冷蔵庫に入っている。そんな両親が好きなものの一つが、竹風堂の栗かのこである。栗100パーセントの餡の中に、栗蜜を混ぜて、ねっとりとして甘すぎず、沙羅家の正月はこいつを栗きんとんと称していただくのである。ちょいと値の張るそいつをいただいて、ああ、新年を迎えたんだねぇ、と感じるのだ。

・さて、かすみは桜井甘泉堂の応援団なので、給料をもらうと栗羊羹おひとりさまを買いに行っている。これは東急名店街(東急デパート。地域ネタですな)で購入できる栗羊羹で、一個200円也。ひとくち羊羹、と銘打つが、淑女の皆様は4口くらいで食べると良いと思う。紳士の場合は二口くらいか?栗羊羹といっても、栗蒸し羊羹とは違う。栗蒸しの方は、黒い羊羹の上にてんてんてんと栗が4,5個乗った代物だが、こいつは栗のみで作られている。その為、栗の実は入っていない。栗のみ(実)違いだ。手のひらの横サイズより小さい。

・で、その羊羹を職場の冷蔵庫に入れておいたのである。残業で仕事に行き詰ると一個、ちょっと小腹が空けば一個、と大切に残りを確認しながら食べていたのだ、が、

な、無い!?

・冷蔵庫に入れておいた栗羊羹がこつぜんと姿を消している。ちゃんと数えながら食べていたのだから間違える筈は無い。ふらふらと居室に戻り、栗羊羹の行方を尋ねる哀れなかすみ。「誰か、冷蔵庫に入れておいた栗羊羹知らない?」と。すると「所長が食べて様としていたやつかな」ってな証言が。ダッシュで所長の居室に行くと、今まさに栗羊羹を一口食べているところだった。

「Iさん、それ・・・」

「あ、これかすみちゃんのだった?ごちそうさま」

・はぁぁぁ?ごちそうさまってあんた、なんだそれ?何時かすみに食べて良いか聞いたんだ?聞いてなかろう!そう、思ったのだが呆気に取られた気分の方が強くて言えない。

・がっくりしていると所長はふらふらとやって来て、

「あれ、美味しいね」

・と言って去って行ったのだった。弁償してもらおうかとも思ったのだけれど、食べれると思っていた期待感を裏切られた慰謝料として、所長がくりようかん泥棒である事をあちこちにしゃべり倒した。以後、かすみの食料に手を出すと破滅するという事が社内に知れ渡り、命知らずの食料泥棒にはあわなくなったのである。

いつまでも あるとおもうな くりようかん

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