かすみ荘 - 雑文:白線を踏みながら
[もどりゅ]

030. 【白線を踏みながら】 (2001.03.08)



・暖かくなって来たので、会社からの帰宅時に、最寄り駅から家までの2キロほどを歩く事が多くなりました。2キロというのは歩くのにはなかなか良い塩梅なんだそうで。1キロくらいだと、まだまだ体内エンジンがかからないそうでして、それってぇのも有酸素運動ってぇやつは、それなりの負荷で15分くらい行って始めて効果を表わすんだそうです。人間の標準時速が4キロっていうのを定石のように教科書なんぞに書かれていますが、こいつぁちょいと早足気味でって事なんだそうで。元気良くちょいと手なんぞ振って、やや大股で歩く方のが時速4キロ。もちろん、正しくは身長とか足の長さなんかが関わってくるんで、はっきり断言は出来ませんが、こうゆう歩き方をしますと、まあ、一番健康にいいんだそうで。

・先だって、家までの道をてくてくあたくしが歩いておりまして、ひょいっと横断歩道にさしかかりましてね、そこで男の子を見かけたんですよ。おっかさんと一緒にお出かけってとこでして、そこで信号が青になった時、その子がぴょこたんぴょこたん歩くんです。よく見ると、横断歩道の白い部分だけを踏んでいるんですね。あたくしには弟がいるんですが、昔弟もちっちゃい頃、ああやって白い所を選んで歩いたもんだと思い出しまして、何となく嬉しくなったんです。

・あたくしが渡ろうとしている横断歩道と、お子さんが渡って来ていた横断歩道は直角ですから、お子さんが渡って、それでもって、こちらの信号が青になる訳です。ですのでお子さんが渡りきった時にはまだ、あたくしを止めています信号は赤でして、お子さんがあたくしの脇を泣きそうな顔で、

「ママ、僕死んじゃったよ」

と、言って歩いていかれました。

・どうやら白線以外を踏むと死んでしまうというルールがあったんですね。あたくしもこれから歩道を渡る身ですから、上手い事渡らないと死んじまうかも知れない訳です。

・ところが、ぴょこたんぴょこたん渡るのが気恥ずかしくって、結局白線以外も踏んで渡っちまいました。てな訳ですから、もう死んでるかも知れません。死んでるってぇ事に気が付いてないだけかも知れません。

今回の文章は噺家風にしてみました。

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