かすみ荘 - 雑文:朝もはよから競歩でGO
[もどりゅ]

033. 【朝もはよから競歩でGO】 (2001.03.13)



・周囲では自他とも認める負けず嫌いのかすみは、毎朝会社へ向かう時に何人の人が抜けるかという自分内レースを展開している。最寄り駅から会社の門までが競技コースであり、決して走ってはいけない。純粋に歩いて抜かなくてはいけないのだ。せっかくなので、背筋を伸ばし、格好良くびゅんびゅん抜いていくと自分中で自分って格好良いなりぃ、とちょいナルの気分になれて楽しい。あごは引かなくてはならない。せかせかしている様に見えてはならない。ゆったりとちょっと大股で、粋に歩かなくてはいけない。腕は軽く振る。目線は3メートルくらい先を見なくてはいけない。

・その日も気分良く歩いていた、らば、抜かれたのである。ひゅいっと、隣を。もきーっと怒りのお猿さんが心の中で鳴く。何で、抜かれねばならないなりか?もきー。確かにあんたの方が背が高いわねぇ。それなら歩幅も大きいでしょうけれどそりゃね、男子ですものね。でも、負けませんわよ。

すたすたすた。

・気合で彼を抜き去ると、彼がまたこちらを抜きにかかるではないか。ふっ、そう、そういう事ですのね。貴方もまた、競歩の誘惑にかかっているのですわね。しかし負ける訳にはまいりませんわ。わたくしもこの駅を利用し始めてから、心の競歩大会が開催されている間は、どなたにも敗北をきっした事がございませんの。この勝負、いざ、尋常に受けさせていただきましてよ。

・その男性がこちらを意識していたかどうかはわからない。でも、こっちは猛烈に意識しちゃったのだから、負ける訳にはいかないのだ。誰もかすみの敗北を知らなくても、天が知る地が知る己が知る。がんばっていると見えない程度の限界まで歩幅を大きくし、カーブではインのコース取りをする。前を、前だけを見て進む、進む、進む。

・ゴールが見えてきた時、相手が半馬身ほどリード、こっちをちらっと見た瞬間にぐいっと抜いて、その差1馬身。追うより追われる立場の方が辛いのは重々わかっている、いるが、あちらの隙を突いた作戦なのだ。そのまま勢いに乗ってゴールするわ・た・く・し。おほほほほ。見ず知らずの同じ会社の人よ、このわたくしに勝負を挑むなんて100万年早くてよ。お味噌汁で顔を洗って一昨日出直していらして。という訳で、その日の午前中は結構ご機嫌であった。午後には忙しくてそれどころじゃなかったけど。

・その数日後、通勤電車で一人の男性と目があった。すると彼はにこっと微笑むではないか。勘違いだと思ったけれど、かすみは人の顔を全然覚えられない人間なので、もしかすると知っている人かも知れないと思い、一応笑顔で答えた。電車を降りて、踏み切りが上がった瞬間、その人が誰かわかった。名前は分からないが、数日前デットヒートを繰り広げた相手でありました。きーっ!いきなり引き離されちゃったじゃないのっ、と思いつつ、今日も名も知らぬ人と競走したのでした。

結果ですが、スタート失敗が響き、負けました。

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