かすみ荘 - 雑文:二本で千円
[もどりゅ]

044. 【2本で千円】 (2001.03.29)



・たぁーけやぁー、竿竹ぇー。たぁーけやぁー、竿竹ぇー。はい、竿竹の御用はございませんかぁ、丈夫で錆びない、アルミ製の物干し竿。二本で千円、十年前のお値段でございます。二本で千円、二本で千円。物干し竿、製造直売の大安売りですよぉ、二本で千円。また、網戸、物干し竿の下取り交換も行っております。たぁーけやぁー、竿竹ぇー。たぁーけやぁー、竿竹ぇー。

・かすみが子供の頃、毎週、町内をゆっくりと竿竹屋が流していた。白い軽トラの荷台に物干し竿を斜めに立てかけて、ゆっくりとした口上のテープを流しながら走行する。今も走ってるけどちょっと違う。

・たぁーけやぁー、竿竹ぇー。たぁーけやぁー、竿竹ぇー。はい、竿竹の御用はございませんかぁ、丈夫で錆びない、アルミ製の物干し竿。二本で千円、二十年前のお値段でございます。二本で千円、二本で千円。物干し竿、製造直売の大安売りですよぉ、二本で千円。また、網戸、物干し竿の下取り交換も行っております。たぁーけやぁー、竿竹ぇー。たぁーけやぁー、竿竹ぇー。

・そう、一文字増えているんです。ちょっとわかりにくいかな。十年前→二十年前になってる。かすみが子供の頃から値段が変わってないの。子供の頃はこれって何時から売ってるのかな?何時になったら値上がりするのかな?ってすごく考えていたんです。ほんとにね、そゆのにこだわる子供っていうか今もそうなんで、そゆ人間なんです、ええ。

・で、子供の頃、密かに竿竹を買ってみたいという欲望を持っていました。だって自分のお小遣いが数百円(しかも小学校3年までお小遣いを貰えなかった)の時に一本辺り五百円で竿竹を買えるのであり、それで洗濯物を干せるのであるからして、やはりここは物干し竿を購入し、お母様に使っていただければ良いのでは、と考えた訳です。しかしながら、かすみは大変しつけの行き届いたガキだったので、親に内緒で千円などという大金を使うの事は出来なかった。

「お母さん、竿竹買っていい?」

「駄目」

・一蹴されてしまった。にしてもここにかすみの母の偉大さが隠されている。もしも、平均的な母親であれば、竿竹購入を申し出た娘に何故竿竹を購入しようとするのかを聞くのではないでしょうか。が、子供の頃から個性的、独創的といえば聞こえはいいけれど、基地外的な要素を多分に持っている娘に付き合っていた母親は、即座に駄目出ししたのです。なぜならこの娘はどうして?などと聞こうものなら自分理論にていかに二本で千円の物干しのある生活が幸せかを延々と展開するに違いないからなのです。

・子供かすみはそのまま気になる竹竿の購入を諦めたのですが、その後、友人と竹竿屋の軽トラを止めて面倒な事になりかけつつも、竹竿の秘密を知る事が出来たのでした。あー、ほんとにね、危うくぼろっちー竹を買わされる所だった。これを読んだ方にはそっとお教えしまする。上にも書いた様に、?。?が入るんです。丈夫で錆びないアルミ製の物干し竿?。?二本で千円。アルミ物干し竿と、二本で千円の物干し竿は違うのです。ご存知の方も多いでしょうが念の為。

・ところであれって、そのうち三十年前のお値段になるのでしょうか。うーみゅ、人に聞かれたらなる方に賭けるけど、ね。

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