かすみ荘 - 雑文:浄化水槽顛末記
[もどりゅ]

050. 【浄化水槽顛末記】 (2001.04.05)



・二十年以上生きて来て、浄化水槽というものをはじめて見た。かすみが住んでいる住宅地は東急電鉄が開発したそうで、都市ガス上下水道完備、というPRで売り出しをしたんだそうな。なので、かすみは浄化水槽というものを見た事が無かった。川崎に住む親戚の家はいわゆるぼっとん便所というやつだったから、御不浄というものは、じゃーっと流れるか、直接落ちて行くかのどちらかだと思っていたのである。しかしながらここ、軽井沢の貸し別荘のトイレは浄化水槽だったのだ。

・今ふと思ったのだけれど、ぼっとん便所もしくはぽっとん便所は何故便所という単語が付くのであろうか。ぼっとんトイレ、ぼっとん化粧室などとはあまり使わない。濁音が多く含まれている便所。しかもおは付かない。ぼっとんお便所。それとも自分の周りで使われていないだけなのかな。今日も何処かでぼっとん東司とか言われているかも知れない。うみゅ。

・浄化水槽をご存知の方は何を悩む必要がある、とおっしゃるのであろうけれど、こちとら浄化水槽の名前は知っていても見るのは初めてなので、頭の中で今見ている便器が浄化水槽であるというつながりが結べていないのだ。脳内のシナプス君とシナプスちゃんが自分達の手をつながなくてはいけないという事に気が付いていないのである。

・おかしひ。そこの部分が丸くなってゐる。試しにレバーを下げてみる。ぱこ、といったふうに丸い部分が下に下がって、元に戻る。その際に流れる水はいまいちな水量しか無い。かすみが知っている水洗と言うものはごじゃーっとそれなりの勢いで水が流れるものであり、こんな紙も満足に流せそうも無いのはここで初めて見たのだ。第一、これからここで用を足すとするとあまりにも心もとない水量ではないかと思ったのですよ。いえ、別に足りないという訳では無いのですが、何事も大は小を兼ねるとも言うし、流しながら用を足してもこれでは音姫様の代わりにはなりません。

・試しに連続でレバーを下げました。・・・。水が出なひ。これはいつたひだうした事でせうか。先に流した時には、ぱこんちょろちょろと心もとなひ水が流れていたのに、今度はその水すら流れて来なひのです。仕方が無いので友達に聞いて始めてこれが浄化水槽なるシステムの御不浄であり、簡易水洗というものだから流しながら用を足すなどという事は不可能であると知ったのでした。

「じゃあ、音が聞かれちゃうなりよ」

「だれもお嬢さんの音なんか聞かないから安心して入りなよ」

「でも自分に聞こえるなりよ。いやなりー。水洗のとこまで行くのにゃ。プリンスのモールの御不浄は水洗だったにゃ、今から行くなりよー」

「何でトイレの為だけにわざわざ車を出さねばならんのじゃ」

「だって歩いて行ける距離じゃないし、かすみさん免許もってないなりよ」

「いやだからね、トイレの度に車を出す訳にいかんだろが」

「そこはそれ、旅の思い出という事で・・・」

「そんな思い出あるかぁ!」

・交渉決裂である。たかだか御不浄如きでそんなに面倒くさがらなくともいいのに。かすみは乗る係りなので、多少の渋滞などには文句を言わないのだから、ねぇ。まぁ、友人が御不浄如きで車を出すという事を否定するのにも色々と事情があったのであろうが、こちとらにも事情があるのだ。小学校の頃からすべからく女子は用足しの音を極力人に聞かせない為の努力を払わねばならぬ、と当時の担任に刷込まれた為に、水洗のある所が解っているのであれば、多少の努力は払うべきではないだろうか。友人達も女子であるから、やはり車を出すのではないだろうか。

・ところが、皆気にもせず御不浄を利用しているではないか。うーみゅ、名案がひとつあるにはあるのだが、それをする為には度胸が必要である。

「何考えてんの?」

「以外と外でした方がお上品かなーっと思って」

「尻を狼に食われるかもよ」

・狼!軽井沢に狼は出るのか?否、断じて出ない。しかしながら世の中には絶対という事は有り得ない。考えろ、考えろかすみ。あばれはっちゃくの様に、一休さんの様に、ちいさなバイキングビッケの様に。・・・。

「いま思い付いたんだけど、お風呂でやっちゃうっていうのはどうかにゃ?」

「絶対駄目」

・その後、泣く泣く浄化水槽式御不浄体験をする事になるのは、ここに書くまでもない事実であるし、その際、皆に「音を聞かせろー」と騒がれ、余計に辛い思いをしたのも旅の思い出になってしまったりした。

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