かすみ荘 - 雑文:コップ一杯の幸せ
[もどりゅ]

081. 【コップ一杯の幸せ】 (2001.06.19)



〇お腹が、痛い。いたひ、と表現すべきかも知れない。女性特有のお腹の痛みなのである。お腹の中で林屋こん平師匠が「ちゃりーん!」と絶叫しているかのやうに痛いのだ。・・・、わかりづらい。しかしながら、あのちゃりーんはかなりの破壊音響である事をここに述べたい。前にあちきが池袋演芸場に行った時に師匠が出て来て「ちゃりーん!」と言った瞬間、耳がじんじんと痛くなった。しかも、同じ音量でチャーザー村の話やら、こんぺーでーす!をやるのだ。あちき以外のお客様はお年寄りだからこれで良いのだろうけれど、あちきにとってはくらくらするほどの音量だった。で、そんな感じなのですよ。うみゅ、わからん。自分でも。

〇痛さの余り笑い出したいくらいである。もう、笑ったけれど。しかも職場の廊下で。低い笑い声に、通りすがりの社員さんもびっくりさ。それでも人間と言うものは、痛い時やピンチの時、ストレスを減らす為に笑う。だから人間としては間違っていないのだ。参ったか、通りすがりの社員さん。参らせてどうする。

〇こういう時に限って、社内心療所の診察券を家に置いて来てしまっている。診察券が無くても、診察は受けれるのだが、もともと診察を受ける事事態が不本意な事なのだ。高々月の障りくらいで心療所に来るんじゃねぇ、みたいな態度の先生もいるし。あちきは薬を出してもらう立場だから、「うっさいんじゃ、病気の軽重で高慢ちきな態度を取りやがって、きさまはあちきの加入している保険組合から給料もらってんだから、ぐだぐだ言わずに処方箋を書きやがれ」などと言った日なんぞ、劇薬の処方箋でも切られかねない。にしても、何でわざわざ診察代と投薬代払って嫌な思いしなくちゃいけないかなーとか感じるので行きたくない。どうせ受付のお姉さんに「次回は診察券お忘れにならないで下さいね」とか言われるだろうし。

○仕方が無いので昼休みを利用して外の薬局に行く事にした。太陽光線ががんがんあたるので、それだけで気が遠くなりかけた。落語、とうなす屋で馬鹿の与太郎が言われる台詞、「表は日が照って熱いからな、日陰を選って(よって。選んでの事)歩かなくちゃなんねえぞ。おまえさんの馬鹿な頭がもっと馬鹿になるからな」というのがなーんとなく思い浮かんだ。日陰を選って歩かねば。

〇7分ほどでふらふらと薬局に到着。鎮痛剤を購入し、昼を食べねばとモスバーガーに入った。薬の処方はというと、大人一日3回、食後に1カプセルをお飲み下さい、とある。しかしながら、あちきは薬が余り効かない体質なのだ。まだ食べてもいないのに3カプセルを一気に飲んだ。お腹の中では相変わらずこん平師匠が「ちゃりーん!」とか言っているけれど、薬を飲んだという安心感で少し痛みが減った気がする。

○やっと落ち着いたので、ご飯を食べていると店長さんが「はい」といきなりお冷やをくれた。何故?とちょっと思ってから、あ、そうか、飲みの残し薬のパッケージを開けっ放しだからであると気づいた。確かに、お薬を飲む人がお水下さいとかいうもんな。あちきがアンミラでバイトしていた時も、「薬を飲むので氷の入っていないお水下さい」は時々ある事と認識していたし。

〇に、しても。ここの店長は素晴らしい。普通、お水下さいと言われて初めて出す店の方がファーストフードのスタンスだと思っていた。経験からしてもパッケージを机に出している時に隣のテーブルを片付けていたバイトさんに「お水、お持ちしましょうか?」と言われたくらいで、見ただけで出してもらったのは初めてであった。

〇飲んでしまった後ではあるが、店長の親切を無にしてはいけない。しかし、通常の4倍飲むのはいやだ。熟考した結果、薬を飲む振りをしてみた。店長も見ていたので、自然に演技にも熱が入る。見ていて下さい紫のバラの人、あちきは今、小さな小さな舞台で、薬を飲む人の演技をしています。しかも大熱演です。なんだよ紫のバラの人って。

○店を出る時に、バイトさんと店長がありがとうございました、とおっしゃったので、あちきも「お水ありがとうございました」とお礼を言って店を出た。おかげで薬を飲む前の眉間のしわも消えた。薬はすぐに効かないけれど、親切が心に効いたのだ。これはかなり感動した。こういうのをちょっと良い話と言うのではないかなと思うのです。接客業は気を使ってなんぼではあるけれど、ここまでの気遣いって言うのは意外と難しいのではないかしらん。

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ああ、今回は良い話なのでちょっとボケ足り無い(笑)

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