かすみ荘 - 雑文:鼻血の看護
[もどりゅ]

088. 【鼻血の看護】 (2001.07.05)



○朝、御不浄に行こうとすると、廊下に血痕がぽたりぽたりと続いていた。うみゅ、どうやら昨晩銃撃戦なり、カンフーの闘争なりがあったのであろうか。とはいえこちとら安眠ぐっすりだったので、銃撃戦や激闘などなかったと考える方が妥当なのであろう。では、この血痕、いったいどうしたというのであろうか。

○このままにしておくと、後が消えにくくなるので仕方なく床掃除を買って出る事にした。しかし、誰も通らない。珍しく家事労働をしているのというのに、それを証言してくれる人がいないと、あちきの偽善的労働作戦が無駄になるじゃないか。ほえほえ。

〇やや不満を抱きつつ、廊下をごしごしやっていると、階下からふらふらと弟が階段を上がってきた。そう、こいつは鼻血をよく吹くナイスガイなのだ。鼻をタオルで押さえているのだけれど、そんな事ものともせずタオルがじわじわと鮮血で染まっていくではないか。なかなかホラーな感じで素晴らしい。素晴らしいが少々勿体無いな。溜めて飲め。さするれば鉄分の補給になるであろう。弟はあちきに軽く礼を言うと、ティッシュをぐるぐると丸め、鼻に突っ込もうと、

「待てぃ。ティッシュを突っ込んではならぬ」

○それはあちきがこまっしゃくれた小学生だった若かりし時の話です。同じクラスにはなぢーマンなどと、ひねりの無いつまぬ仇名を付けられた生徒がおりました。彼ははなぢーマンの名に恥じる事無く、日々、鼻血を吹いておりました。

○そもそも、鼻血とはどの様なメカニズムで吹いてしまうものなのか。実際の所はメカニズムではなく(人はメカではないし)生理現象の一つなのかも知れませぬが、あちきは医学というものを知らないのでこれだけの事しか知りません。要は鼻の粘膜が弱ったり、毛細血管が切れたりして血液が出る。人間というものは、頭部に怪我を負うと、体の怪我と比べて、たーっくさんの血液を景気良く放出する。まさに出血大サービス。190番のお客様、おめでとうございます。ただ今より、無制限サービスチャレンジになりました。はい、じゃんじゃんばりばり、じゃんじゃんばりばり、じゃんじゃんばりばり、パチンコマン。

〇クラスが決定したばかりの頃は、彼が鼻血を吹く度に、ちょっとした騒ぎになったものですが、そのうちに慣れたものになって来ました。はなぢーマンの鼻血は鼻を押さえてぼーっとしていれば5分程度で止まるという事がわかったからです。しかも本人もそれを自覚していたので、慌てず騒がず「先生、鼻血」と手を挙げて水道に行き、手を洗っているうちに止血終了。

○ところが、ある日彼の鼻血が止まらなくなってしまったのです。手を洗って戻ってきても、鼻血はたらーりたらりと流れ続ける。先ず先生が騒ぎ出しました。大切な教科書にも血がしたたっています。先生は彼の顔を上に向かせ、ティッシュを丸めて彼の鼻に突っ込もうと、

「先生、ティッシュを詰めたら駄目です。しかも上を向かせてはいけません!」

〇慌てている先生と、保健係の前に立ちふさがるちびあちき。あちきの知識からするとティッシュを詰めるというのは、まさに愚行であり、それにより細かいティッシュの繊維が鼻に付着し、後の処置が大変になってしまう。さらに上を向かせる事により、鼻血の塊が喉へ落下し呼吸困難を起こす可能性もある。ばーい、家庭の医学。

〇しかしながら、鼻血にはティッシュという通説がまかり通っていた為、あちきの説を聞こうともしないのだ。ふん、この凡人どもめ。落ち着いて鼻血を窒息、鼻血とティッシュの因果関係を説いているにも関わらず、おお慌ての先生と保健係はティッシュを詰めた上で、はなぢーマンをぐぇっというほどきつーく上向きにしてしまった。ちびあちきは味方をクラスに見出す事が出来なかったので、授業中という事など構わずに保健室に直行しました。保健の先生には常日頃からお世話になっていたので(小児喘息持ちだったし、朝会、プール、マラソンで倒れる常連だったし、仮病の常連だったし)、あっさりついて来てくれました。その後、斜め下を向いたはなぢーマンは適切な処置をされ、彼の血塗れ教科書は新品の在庫と交換されたのでありました。

○あちきが思い出に邂逅していると、

「いいよお姉ちゃん。どうせ僕の鼻だから。いつもこうだし」

などとほざいてティッシュを詰めてしまう弟。貴様、何をしやがる。にしても、大人になってもこれといった原因も無しに鼻血を吹くのは問題なのではないかしらん。

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