かすみ荘 - 雑文:水割りを下さい
[もどりゅ]

090. 【水割りを下さい】 (2001.07.05)



○歌の出だしなのだけれど「水割りをくださぁい。涙のぉ数だぁけ」というのがあった。あちきが子供の頃、何故かあちこちで聞いてしまい、以来記憶中枢にインプットされてしまった歌なのだ。そんでもって「数だけ」の後は定かでなく、最後の部分が「あいつなんか、あいつなんか、あいつなんか飲み干してやぁるわ」だったと記憶している。最初と最後のみのインプットでサビは何処かで消えてしまったらしい。所詮子供の記憶力などそんなものである。ちなみに某友人は?涙のオカズだけ?だと思っていたらしい。どんなお惣菜だそれは。

○ので、水割り、という言葉を見たり聞いたりすると「水割りをくださぁい。涙のぉ数だぁけ」というメロディーがパブロフの犬もかくやといった調子で流れる。あちきは成人しているので、当局の目など気にせずアルコール飲料をドリンクする事が出来る。とはいえ、あちきの好きなチョコレート菓子のトリュフにはかなり濃度の高いアルコールが入っているが、童子の頃からばくばくと食しており、当局の爪の甘さは何とも言い難い。ま、それはそれとして、とにかくアルコール飲料を扱っている場所に行けば、大概水割りという名前がメニューに記載されている。すると誰かが頼む頼まないに関わらず、メニューを見た瞬間に曲は流れるのだ。

〇それくらい水割り=その音楽という図式が出来ているあちきがその単語を聞いた瞬間、反応しない筈が無い。それは先日の旅の終わり頃、韓国から日本に帰ってくる飛行機の中での事である。韓国の雑文に書いた様に、あちきはかなり凹んでいた。飛行機は航空力学に基いて飛びやがってるけれど、ジェット機は何トンあるんだよ、やばいって、やーばーいーなどと考えたり、不時着なら良いけど墜落はいやんとか考えたり、海水の温度はどれくらいかな、海に逃げるのは良いけどディープワン(byラブクラフト)に捕まったりしないかなと考えたり、とにかく考えるのに忙しく、考える度凹んでいた。そんな状況で

「すいませーん、水割り、ありますかぁ?」

?水割りをくださぁい?(頭の中に流れる)

○誰だよ、誰なんだよ。声の方を見ると20代前半くらいのお兄ちゃんのグループである。5人グループの様であるが、すでに顔が赤い。どうやら搭乗前にちょいと一杯のつもりで飲んで来たのではないだろうか。ちょいと一杯というものは、いつの間にやら梯子酒になるらしいが、彼らはどうなのだろうか。機内サービスはビールとコーラであったが、もちろんウイスキーもワインもある。わざわざ聞かないだけだが、エコノミー用、ビジネス用、ファースト用とちゃんとランクの違うお酒があるのだ。エコノミーだのビジネスだのという名称が付いているが、所詮3等、2等、1等席なのだ。お金を出せば王侯貴族のように、出さなければそこそこに扱われるのだよ明智君。なんだよ明智君って。それにしても船旅の等級は潔いね。1,2,3等とあって、1は個室でベットで毎日シーツ取り替えあり、ルームサービスありなのに、3は毛布と枕支給で雑魚寝、とかさ。

○そんなこんなで彼らは水割りで乾杯をした。しかもビールもたくさん貰っている。さらにどんどんお代わりを要求。その度にあちきの頭に「水割りをくださぁい」の曲が流れる。5人で「水割り俺も」「あ、俺も」などとやれば、ご丁寧に頭の中の音楽も「水割りをくださぁい」の輪唱だ。あー、うるさい。

〇そうこうしているうちに、1人のお兄ちゃんが「トイレ、行ってくる」といってふらふらと席を離れた。その時のお兄ちゃんは、飛行機が揺れているからか、それとも本人のジャイロが揺れかけているのかわからないが、ふらふらとしていた。

「貴方っ、大丈夫っ!?」

○ちょっと年かさの女性の声が後方から聞こえた。あちきの席は通路の隣であったので、ちょっと首を後ろに向けるだけで、声の方を見る事が出来た。そしてそこには、通路にぶっ倒れているお兄ちゃんがいた。うみゅう、三半規管にトラブル発生。エマージェンシー、エマージェンシー、自立歩行どころか立つ事も出来ません。

〇パイロットとスチュワーデスさんに支えられ、お兄ちゃんの戻った先には、べろべろに酔っ払ったお友達がいた。それにしても、どれだけ飲んだのであろうか。あ、あの足元の包みはお土産と思しき焼酎ではないか。お土産というものはお持ち帰りする筈の物ではなかったのか。

〇酒は飲むもの、呑まれぬもの、というが、呑まれまくったお兄ちゃん達は成田から無事帰れたのであろうか。いや、別に彼らが帰れなくてもあちきには関係なんだけど、ね。

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