かすみ荘 - 雑文:八つ時に音が鳴る
[もどりゅ]

092. 【八つどきに腹が鳴る】 (2001.07.11)



○落語に時蕎麦というのがある。話としては実に簡単なもので、ご存じない方の為にちょっと紹介させていただくと、

おばかさんな与太郎が夜に道を歩いていると、夜泣き蕎麦(おそばの屋台)がいて1人の若者がちょうどそこに立ち寄った。器を誉めたり蕎麦を誉めたり具を誉めたりしているので、与太郎は何となく文句を付けながらそれを聞いている。支払いの時点で、小銭しかないから数えながら渡すよ、と若者が言って、

「1,2,3,4,5,6,7,今なんどきだい?」

「へえ、9で」

「10,11,12,13,14,15,16、じゃあうまかったぜ」

と若者が2文(文はお金の単位。蕎麦の値段は16文。2x8の16文からにはち蕎麦とも呼ばれる)誤魔化すのを見て、俺もやろうと考える。次の日、わざわざ蕎麦を食べに行き、

「1,2,3,4,5,6,7,今なんどきだい」

「へえ、5つで」

「6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16」

といったものである。うろ覚えなので、時間の数は違う可能性が大。とにかく与太郎は損しちゃうのだ。

○昔の時刻は1つ、2つといった分け方をしており、1つが今の2時間にあたる。今はこんな時間の表現はしないけれど、あちきが思い付く限りでは、藁人形に釘をぶちに行く人は牛三つどきを利用するし、午後の3時はおやつの時間なのである。おやつの時間はやつどきにあたる。ので、おやつなのだ。これは事実。

〇さて、あちきは保母さんの専門学校をドロップアウトした女である。とはいえ、一応学科はすべてクリアしているので、その頃やった勉強をちょびっと覚えている。ちなみにクリアできなかったのはピアノだ。もしもあの時のピアノの講師が目の前に現れたら、かなり怨み、かつ嫌いなタイプであったのでキャメルクラッチを決める予定。で、その学科でならったの栄養学で

<幼児や子供のおやつはとても大切>

という項目があった。子供というのは体を成長させる為に非常に多くのエネルギーを必要とする。その為、一日に3度の食事では好ましくないという。その為に補食、いわゆるおやつを与える必要があるのだ。

○なので、子供には補食が必要というのは理論的に正しい。しかしながら体が完成した大人までおやつを食べるのは何故か。これは人と一緒に休んで、親睦を深めたり、心身のリフレッシュをする為らしい。だからお腹がいっぱいになるほど補食を取る必要も無いし、それ以前にお腹はそんなに空く筈もないのだ。

○のだ、が、何故あちきのお腹はぐぅ、となるのであろうか。何故こんなにお腹が空くのであろうか。どうしてお腹が減るのかな?おやつを食べないと減るのかな?いくら食べても減るもんねぇ。しかも、異様にお腹が空くのだ。その上、ちょびっと食べるだけでは焼け石に水、いや、正確には砂漠でからからに喉が渇いた状態で一口だけ水を飲んだようなものである。もっと食わせろ、なのだ。

〇その為、結局かなりの量の補食を取る事になり、体に厳しいだけでなくあちきのあちき国家予算の中でも、補食費として多くの割合を占めやがっているのだ。いや、もちろん自分が悪いのだけれど。という訳で、おやつを断つ事にした。一日三食の食事と、一家団欒時に食べる少々のケーキやらお煎餅やらで過ごそうという作戦なのだ。この作戦を実行すると、一日にあちきが取っているおやつ分、無駄な1000kカロリーほどの摂取が無くなり、かつ定期的な食事を行う事による消化器官の負担が軽減される筈だ。しかもおやつ代も減る。元々、20代の女性の一日の必要カロリーは1600程度で良いらしいので、多少お腹が空いても慣れれば体の方も慣れて、入って来る食事から効率よくエネルギーを摂取する筈である。

○一応軽い決意をして、朝食をばっちこ摂って出勤。9時半も過ぎるとお腹が減って来た。頑張れ、頑張るのよ、ジョー。ここで食べたら昨日までの自分と一緒になってしまうわ。今ここで欲望に屈したら、10年後のあちきの健康はどうなってしまうの。何やら一人で騒ぎつつ、何とか午前中をクリアする。お昼は腹八分目を目安に食事しようと思ったのだけれど、社員食堂は女性にちょいと盛りが多い。かといって小盛りにした所で値段は変わらない。しかも、あちきが小盛りというと社員食堂のおばちゃんはごっつい小盛りにしてしまう。半分、という場合と変わらないのだ。おばちゃんは阿智気がそんなに食べない様に見えるのであろうか。痩せてはいるが痩せの大食いという言葉があるのだ。あちきが小盛りといっている時は、デザートをたくさん摂る時だが、半分と小盛りは違うのだ、うがぁ。結局、どこまで減らされるかわからないので、普通に盛ってもらった。やっぱり多いね。もきょきょ。残すのは勿体無いので全部食べたら、気持ち悪いくらいお腹一杯になってしまた。ぐったり。

〇ところが、お腹一杯に食べたにも関わらず、2時半の時点でお腹が空いてきたのである。恐ろしきかな、長年の積み重ね。考えてみれば中学時代から学校にお菓子を持ち込んでいたものだ。高校もおやつを食べ、専門学校もおやつを食べ、バイト先でもパイ(byアンミラ)を食べ、就職してからも10時と3時におやつ。どうやっても今日明日には太刀打ちできない習慣なのだ。でも、ここで我慢しなくては午前中の苦労が水泡に帰すのは必至。これを日々続けていけば健康になれるのだ(と健康専門雑誌に書いてあった)。

〇で、他のフロアにお届け物があったので、ちょいと気分転換を思い席を立った。健康という魔法の呪文に操られているあちきは迷わず階段へ。てこてこと階段を上がっていくと、上から職業上尊敬している某男性(妻子あり)が。

「こんにちは」

「あ、こんにちは。かすみちゃん忙しそうだね」

「いえ、そんな事ないです」

ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。

○ビル内部の階段というものは密閉性が高く、音が良く響くのである。あちきのお腹の音は、増幅され元気良く階段フロアに響き渡った。固まるあちき。

「お腹、空いているの?」

「え、いえ、そういう訳では・・・」

「痩せてるんだから無理にダイエットとかしなくても大丈夫だと思うよ」

「そんな事していないです。この事は秘密にしておいて下さい」

○しくしくしく。健康は一日にして成らず。日頃の習慣がものをいうのだ、という事を実感しました。ああ、はらぺこ女と思われていたらどうしよう。無理しまくって痩せていると思われたらどうしよう。しくしくしく。

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