かすみ荘 - 雑文:夏のお嬢さん
[もどりゅ]

096. 【夏のお嬢さん】 (2001.07.18)



○梅雨も明け、夏本番な日々がやって来た。今年は気象庁が梅雨明け宣言する前の間、かなりの期間雨が降らなかったので、宣言が遅い様な気がしたのだけれど、例年の梅雨明け宣言時にあんまり興味が無いので、比較する事は出来ない。実際の所早いらしいのだけれど、いつもが余裕を持たせているのかも知れないし。

○梅雨明け後というか梅雨明けちょっと前からというか、あちきの住んでいる横浜はとっても暑かった。その為、唯でさえ嫌な出勤時の殺人ラッシュが、地獄のものではないかと思える様になってしまったのだ。

〇あちきは元々人と接触するのが苦手で、仲の良い人でも勢い良く近づいて来たりすると体を返して中央からあたらないで済む様に調整する癖がある。握手も好きではないし、抱き合うなどというのはもっての他なのだ。同性の家族でまあなんとか平気で父や弟などは肩に触るのにもちょっと遠慮してしまう。好きな異性でも過剰な接触や不意の接触、長時間の接触などに対して目眩や息苦しさを覚える時がある。ので、殺人ラッシュ時には出来るだけ空いている各駅停車のより空いている(といっても乗車率は100を超える)車両を探して乗るようにしている。さらに異性より同性の多い方へ流れて行くのだ。

○暑くなるにつれて、半袖の人が増えてきた。肌と肌が直接接触すると軽いパニックになる時もあるので、自分は長袖で乗り込む。あちきに問題があるのだから、あちきが自分で自己防衛するのがスジなのだ。ところが、夏になるといくらこちらが長袖着用といえど新たな敵が現れる。暑い時、人間の生理的なメカニズムとして発汗し、その水分の蒸発を利用して気化熱による体温調整を行うのである。そう、その汗が嫌なのだ。あちきも人間であるし、新陳代謝はそれなりに正常に行われているので、汗をかく。しかしながら、他人の汗がつつーっと流れていて、それがあちきのシャツなどに付く事を考えるとそれだけでくらくらしてしまうのだ。もちろん自分の汗が人様に付くなどというのも嫌だ。電車に乗る前にがしがしと額などを持参のハンドタオルで拭く。でも人様の汗をがしがし拭く訳にいかない。

○本日の殺人ラッシュで右腕に何やら湿った感触を覚えた。くらくらしながらそちらを見ると、背中をびっしょり濡らしたお嬢さんが、あちきの腕にもたれかかっているではないか。何故だ、何故そんなに背中を濡らしているのか。水でもかかったのか。考えてたくは無いがその広がり方を見ると汗なのか。それともうぶめか、早朝から元気良く化けて出るタイプなのか。否、何でうぶめが出勤時間の電車に乗らねばならないのだ。

〇じわじわとあちきのシャツにお嬢さんの汗が吸い込まれているらしい。勘弁していただきたい。あちきのシャツはお嬢さんのハンカチではないのだ。しかしながら朝のラッシュ、身動きすらもままならぬぅ。

○原因が暑さでは無い汗をじわじわかきながら、りろりんりろりんと危険信号が脳内で鳴り始める。お嬢さんに視線がロックオンされてしまい、他を向けないあちきの視線に気づいたか、お嬢さんはあちきの方を見た。一呼吸置いて、

?にっこり?

〇なぜか微笑んでくるお嬢さん。何だ、何をどうしてにっこりなのか?あちきを見て惚れたのか?あちきはそんなに男前か?UV対策に身を固めたあちきは、TVシリーズの金田一浩介、横溝正史の世界に見えると自負しているのだが。しかもあちきの眼鏡は色眼鏡〜。

〇混乱しかけたその時、何故かそのお嬢さんはゆっくりとあちきに寄りそってきた。べたべたべた。接触部が増えていく感触が・・・。はうっ!何だ、どうしたんだ、このお嬢さんは百合百合ちゃんなのか?遠ざかる意識の中、停車した駅のホームに何とか脱出し、ファイバードリンクで一息。あちきのシャツには無残にも薄らとしたしみが付いていた。オフピーク通勤にご協力下さい、なるポスターを見ながら「出来るものならやってるって。企業が出社時間を定めているのだから、個人に訴える様に書いても仕方がないじゃない」とこちらも言っても仕方が無い事を言ってみる。

○お嬢さんへ。暑い時期は自分の汗くらい拭こうよ。例え自分は接触しても平気だとしても、相手は嫌だと思う事があるし、まして微笑まれても困るし。ねぇ。

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今回は負けたので毒を吐く気力もありません。

百合百合ちゃんの意ですが、女性の同性愛者の事です。
百合だけでいいのですが、なんとなくあちきは二回繰り返しています。

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