かすみ荘 - 雑文:結構痛いのです
[もどりゅ]

115. 【人魚姫も例えられれば嘆くであろう】 (2001.08.31)



○動けない。

○狭い室内であちきは一人苦悩する。しかも、決して助けなど呼ぶ事は出来ないのだ。誰かがいてくれれば心強いのに、などという事はまったく無い。誰かがいるという状況に陥れば、それこそしばらくの間、失意の底に落ち込むであろう。

○金縛り、というものがある。筋肉の緊張や弛緩の具合や、霊現象などで起こるといわれていて、体の一部ないし全体が動かなくなってしまう現象であり、いわれていると書いたのは、霊なぞ信じないのです、そりはプラズマなのです、とおっしゃる方などには通用しない例えだからだ。この動けない状態は、その金縛りに近い。ただし、足のみ。足限定の金縛りである。

○あちきは毎日の様に足の動きを封じ込められている。しかも、狭い室内で。いくらあちきが香港特撮カンフー映画や。香港特撮幽霊映画や、香港特撮時代物映画好きとはいえ、何かの修行をしている訳でも無し、好き好んでこんな目にあっている訳では無いのだ。

○さて、何故毎日の様に閉じ込められて足の動きを封じ込められているかというと、単にご不浄の個室で足が痺れているだけなのである。あちきの家と会社のご不浄は洋式なのだが、短時間の利用に問題は起きないが、長時間使用しているとあちきの足は痺れ出すのだ。まあご不浄に長時間いる事も問題なのだが、色々あるのだ。人様はご不浄で如何様な事をされているかは知らないが、ご不浄でする出来る事はいくつかある。人生について考えるか、宇宙について考えるか、フォビアについて考えるか、本を読むか、ちょっと寝るか、用を足すかなどなど。最後の作業が本来の使い方ではあるが、考え事をしたり、邪魔の入らないしばしの休息など、なかなか便利に使用出来るのである。そうして結果、長居をして、気がつくと足が痺れて動けない状態になってしまうのだ。毎度、次回は長居しない様にしようと思うのだけれど、前回の後悔はまったく役立たず。

○普通に椅子に座っている分には足は痺れない。それと同じで蓋をした状態で座って寝ていても足は痺れない。問題は便座にあるらしい。自重が便座の枠の上にある場合、おしりの真ん中は中空に浮いている。この浮いているという状態が悪いらしい。便座に接触している足の部分、ここで血の巡りが悪くなり、足に充分な血液が供給されず、足が痺れる。実際の所、リンパの流れも悪くなるのだろうから、その辺りも反映しているのではなかろうか。

〇さて、そっと足を踏み出すのだけれど、先ず痛くて立てない。わざと足をとんとんと床に当てるのだが、痺れているというより痛い。床にあたる度に激痛が走る。とはいえ少しでも血液の流れを良くしなくては足が動かないのだ。ぶんぶんと足を振りつつ、そぉっと立てるかどうか確認する。嗚呼、こんなに立つのに苦労するなんて、人魚姫の様なあ・ち・き。人魚姫も声の代わりに足を貰って、魔女に「人間の足で歩くと死ぬほど痛い」とか言われておった。死ぬほど痛いのであらば、歩いているうちに死んでしまってもおかしくは無いのだろうが特に歩いていて死んでしまったと言う件は無いので、とにかく激痛という事なのであろう。あちきも痛い足を我慢してうりゃっと立ち上がる。立ち上がるのだけれど、二の足が進まない。進まないというより上がらない。上に足をあげる事が出来なければ、先に進む事が出来ない。しばし、個室の中で立ち往生する。足を曲げたりしてみる。気をつけないと後ろにひっくり返って、便器に頭をぶつける可能性もある。だって一回ぶつけて気を失いかけたもの。くすっ。

〇何とか足をずりずりと引きずって歩ける様になって、やっとご不浄から脱出成功。とはいえ足を引き摺りながら歩くあちきは、誰が何と言おうとおかしい。しかも表情がとっても真剣。あちきはいつも気張って歩いているので、格好悪い所を見られるのがとても嫌いなのだ。ってな訳なので少しでも痺れている足の事がばれない様に気張って歩く。その姿は気張っていようがいまいが不信なオーラが漂っている。実際に「足、どうかしたの?」と聞かれ、「つったの」と嘘をついたりもしているのだ。

○何とか自分の席に戻り、びりびりと痛む足をぐいぐい擦る。痛いのは我慢だ。痛ければ痛いだけ早く治る。そうして何とか復活するあちき。そしてまた、すっぱり忘れてご不浄で苦しむ事になるのだ。にしても、どうして忘れてしまうのであろう。それより何より、どうして周りの人に聞いても便器に座っていたら足が痺れたと証言してくれる人がいないのであろうか。あ、もしかして隠れ痺れ派がいるとか?痺れる人の秘密組織があるとか?あるのなら、ご存知の方、教えてください。きっと早急に痺れを取る方法を教えてくれるに違いない。個室で気を失ったら秘密裏に助けに来てくれるに違いないのです。

〇雑文のTOPへ〇TOPへ〇次の雑文へ〇

前へ雑文のトップへ次へ