かすみ荘 - 雑文:ペーパーの芯も残ってなかったの
[もどりゅ]

144. 【貴方ならどうする?】 (2002.01.25)



○ちょっと前の出来事でございます。

○あちきの職場の入っている研究棟は四角形をしていて、西側が通常の入り口、東側が搬入口になっている。そんでもって北側と南側にそれぞれ居室が並んでいる。ご不浄は東西に男女それぞれ1つずつ付いていて、女子の個室は3つずつある。男子の方は覗いた事が無いのでわからない。勿論、男子に聞いてみるという手もあるのだが、この先ここで仕事を行っていくにあたり、男性ご不浄の数の把握が必要になる事は無いと思うので、聞いただけでも痴女と勘違いされる恐れもある。ので、あちきの中ではそこにあるとだけ把握しておけば良いなり、と処理されている。

○以前、この雑文コーナーで「ご不浄で足を毎回の様に痺れさせて、よたくたと歩いている事を告白したが、今回の話はもっと宜しくない。自分中で人生の中のピンチ10に堂々3位あたりのランキングなのだ。先に書いておきますが汚い話です。あちきの事を天使の様に清らかな女性だと思っていらっしゃる方は読まれないで下さい。

○その日は朝からお腹が痛かったのです。何も仕事が無ければ確実にお休みしているであろう痛さ。お腹の中で小人さんがツイストを踊っているイメージ。BGMは君の瞳に恋してる。とはいえどうしてもやらねばならない仕事があるので、のこのこと出社を致しましたのです。ああ、資本が体の労働者は辛いね。

○そして、少し落ち着いてCADに向かっていると、急転直下の勢いで、腹痛が。よたよたとご不浄へ。人間ピンチの時は思った様にスピードが出ないものです。頭の中にはkasumiピンチのテーマが流れ出し、やばい汗が手のひらから・・・。そういえば前回このkasumiピンチのテーマが流れた時は献血の後に貧血を起こし、電車から転げ出て駅員さんにお茶をご馳走になった時だなぁ、などと思いつつご不浄へ。一歩進むのにも、異常な緊張感が。

○何とか無事ご不浄に到着し、用を足して、水を一度流し、忌むべきものを葬り去ってはふぅとため息をついて、ふと左手を見ると、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!がぁぁぁぁぁぁぁん!
そうです、紙が無いのです。予備の紙も無いのです。

○いつもお掃除をやって下さる業者の方がコンスタントに紙を補充していてくれていた為、職場のご不浄で紙が無いなどという状況に遭遇した事が無く、油断をしていた事は認めます。認めますが、まさかまさか、こう余裕の無い時にこんな事にならなくても良いじゃないか、良いじゃないか、よいよいよいよい。

○さて、こうなった時、他の人はどの様に対応するのであろうか。作戦としてはいくつか考えられる。
1:外にいる人に助けを求める。
2:手持ちの紙で何とかする。
3:汚物入れの中の紙を利用する。
4:思い切ってワイルドに拭かないで出る。
以上があちきの考えた作戦であるが、勿論、考えるのと実行するのは違う。それに可能不可能のファクターが生じるではないか。先ず1の作戦。これは至極正当な作戦ではないだろうか。しかしながらこの作戦を遂行するにあたっては、援軍が必要になって来る。丁度ご不浄の中にはkasumi1人しかいない。いつもは1人2人入っている人がいるのに、こう言う時に限っていない。さらにいたとしても相手によってはご不浄の個室から助けを求めたうっかり女としての烙印を押される可能性もある。いずれにしても誰もいないし入って来ない。次に作戦2。職場のご不浄に行くのに、わざわざティッシュなど持っていかない。行くのは花粉症の時期くらいだ。しかしながら現在は時期になっていない。よって紙は無い。ポケットの中に文庫本が一冊入っているが、コレをひっちゃぶく訳にはいかない。何故ならわざわざ古本屋で購入した、絶版のハチャハチャ小説だからだ。しかも定価より高かったし。そして作戦3。汚物入れの中には綺麗に始末する為にトイレットペーパーを使っている事が多い。多いが、同じ女性として他の女性のそういうものを利用するのははなはだ品性に欠けるのではないか。自分だって人にそんな事されたくない、だから自分も行わない。そうだよねぇ。最後、作戦4。これは初めから論外である。あちきは妙齢の女性なのだ。こんな事をしたら自分が嫌になってしまうに違いない。恥ずかしいけれど大人しく誰かが入って来るのを待とう。

○などと懊悩していると、電気が消えた。そう、ここのご不浄は省エネの為、入り口付近のセンサーに15分以上反応が無いと電気が消えるのだ。つまり、現在誰かが入って来るとすれば、ご不浄の電気が消えていて、当然誰もいないと思って入って来るのに個室の中から助けを求める人がいる。こりは、まずい、非常にまずい。その人にはあちきがお尻を出したまま暗がりの中トイレにいた事が解ってしまうのだ。

○そしてあちきは決意した。お尻を出したまま、隣の個室に移動する!と。

○今、冷静になって考えれば、何で大人しく救助を待たなかったんだろうと思う。別に電気が消えていてもいいじゃない。助けてもらったっていいじゃない、と。けれど、何故かその時は暗がりの中に延々座って助けを待っている自分というものが、物凄く惨めに思えてきたのであり、助けてもらってしまうと、その相手に一生劣等感を持つ様な気がしてきちゃったのである。

○あちきは耳に全神経を集中した。職場の廊下は足音がとても良く響くので、足音がしなければ、ご不浄に人が入って来る可能性は低い。勿論、足音のしずらいスポンジ底の靴を履いた人が現れればもうお終いである。あちきの名前は職場のご不浄で(しかも少しは外来の方も利用する)お尻をむき出した女としての烙印を押され、会社も辞職する事になるだろう。そんでもって再就職する時もどうして前の仕事を辞めたんですか?と聞かれた時に、「一時期母が入院しまして」などという嘘をつくのだけれど、思いっきりきょどってしまって尽く面接で落とされるかも知れない。けれど、けれど・・・。

○勝負だ、あちき!まだ怒りに燃える闘志があるなら!

○そっと鍵を開け、気配を窺う。此処からはまさにスピード勝負。景気良くドアを開け、手を拭く為に持って来たタオルを入り口に向かって投げる。返す体で隣の個室に滑り込む。?がちょり?

○やった、やったよ、お祖母ちゃん。天国から2人とも見守ってくれていたのね〜。タオルも見事センサーを反応させて、電気も着いた。後は落ち着いて意気揚揚と退出するだけである。あちきは個室を出て、ぶん投げたタオルを回収し、タオルを洗う為に一路給湯室に向かった。

〇雑文のTOPへ〇TOPへ〇

前へ雑文のトップへ次へ