かすみ荘 - 雑文:いつもバイト先に来るおっさんに夜道で送ってくよと毎回出待ちされた事もあり。
[もどりゅ]

167. 【闇に潜むもの】 (2002.04.05)



○真っ暗なのです。深遠、暗黒の闇の中、あちき大ピンチです。脳内ではあちきオーケストラが、あちきピンチのテーマを演奏しています。するな、演奏。

○少なくとも、あちきの映像器官に問題がある訳では無いというのはわかっています。何故なら、ほんの数時間前まで通常機能していたし、先程、この暗黒地獄から逃れるべく、枕の下に置いておいたPHSのボタンを手探りで押したらぼんやりとバックライトが光っていたのも確認済みなのです。あちき、視覚に問題無し。

○さて、現在置かれている立場であるが、枕の下からPHSを引っ張り出したと言う所から解っていただけるかと思うのだけれど、寝具の周囲にいる事は間違いない。数時間前、あちきは自分の部屋に入って、電気を落とし、お気に入りのフランスベッドの羽毛布団に包まったのだから、寝ている間に拉致られ、布団に包まれたまま運搬されていないとすれば、ここはあちきの部屋である。布団に包まれたまま運搬、と書いたのは、あちきが睡眠と言うものに異常な執着を持つからであって、灼熱の夏であろうが、自分のものとみなした掛け布団は放さないという性質から推察出来る。

○それにしても、先程何となく目が覚めてしまい、周囲を見回すと、真っ暗で何も見えないとは如何なものか。あちきは暗いのが大嫌いなので、寝る時には必ずグローランプとかいうオレンジ色の小さな電球を着けているのだ。にも拘らず、真っ暗闇。世の中には、暗いのが平気の人と、苦手な人がいる。あちきは後者だ。どれくらい恐いかと言うと、真っ暗な中に一人で放って置かれた場合、動けなくなってしまう程、恐い。これというのも、中学校の時に暗い夜道で痴漢に襲われかけたからだ。ああ、可哀想な中学生のあちき。悲鳴をあげて逃げたからこそまだ救われたが、以来暗闇からは何が出て来るか解らないという恐怖を感じてしまう。ので、電気が着いていないのは非常に恐い。自室であっても、異常に恐い。確かに、理性で考えれば、自室に痴漢が現れると言う事が無いのはわかっているのであるが、こればかりは本能的に恐いので、どうする事も出来ない。助けてぇ。

○世の中には、暗黒の中、ご不浄に入ったり、お風呂で歌ったりする強者もいるそうのだけれど、その人は中学生の時、痴漢に襲われた事が無いからふんふん歌っていられるのだ。一度畑に押し倒されてみれば話は変わるに違いない。いや、別にそういう被害者は増えて欲しくないけれど。実際辛いし。

○ともかく、先刻から暗闇の恐怖から逃れるべく、布団をかぶって電気が着く、若しくは誰かが救出に来てくれるのを待っているのであるが、どうやらどちらも無理の様である。電球が切れたのか、ブレーカーが落ちたのか定かではないが、部屋のドアが閉じている状態で、廊下側からの救助をあてにするのは間違っているのであろう。かといって、窓から誰かが進入してくるというのもいただけない。この状況で窓から進入して来ると思われるものは、強盗か泥棒か、少なくともあちきを助けてはくれないだろう、うみゅみゅ。

○仕方が無い、自力で脱出、と思うも、PHSのバックライトごときであちきの恐怖心を打ち砕く事は出来ない。出来るのであれば、こんな所で布団蒸しになったりはしていない。非常用の懐中電灯でもあれば、気分は高揚するのであろうが、自室に懐中電灯を置いている女性は少ないのではないだろうか。少なくともあちきの部屋には無い。後、光の出るものといえば、レーザーポインター。この真っ暗闇の中、何をプレゼンしようというのか、あちきよ。

○そいえば、蝋燭があったなりよ。問題は、窓際に置いてある蝋燭に上手い事火を点けたとして、それをもって見事部屋を脱出出来るかどうかである。しかも、蝋燭変な形だし。通常何に使っているかというと、魔法をかけるのに使っているのだ。ええとね、あちき、タロットカード集めているなり。それで使う前に蝋燭の光にかざしたりするのです、するのです。いやん、オカルト。一応、それ様の蝋燭を何セットか持ってるのだけれど、当然お値段もそれなりで、こんな事に使うのは勿体無いのだけれど、背に腹は変えられない。恐る恐る、布団から手を出す。えい。掴めず。

○大体こんな真っ暗闇の中布団の外に手を出したら、ざざむしに手を食べられてしまうかも知れないではないか。ざざむしというのはあれだ、ほら、ぞむぞむ動くやつ。とにかく恐いやつ。恐すぎるので見た事もないけれど。光を得る為に手を食われたら、この先不便で仕方が無い。あちきの利き腕は元々は左であるが、お箸は右で持つ。書道も右で習得した。マウスも右。物を投げる、フォークを使う、ペンタブレット、絵を描くときは両方。ハサミ、カッター、製図作業、スプーン、ナイフは左。いわゆる左利きだったんだけれど、親が右利き優先日本国のシステムに、可愛い我が子が対応しておらず、とにかくなおうそうとしたらば中途半端な両効きになってしまったという結果が垣間見える。なので、どちらの手も大切だ。どっちが無くなっても困る。どちらかといえば左を残しておくべきではあるな。お箸も間違って入るが左で持てるし、原稿用紙に枠線を書くのには左手だ。そもそも、仕事が辛い時に「骨折でもしようかなぁ」とゆったらば、「右手さえ無事なら、僕が迎えに行ってあげるよ。ぼひょひょひょひょ」と笑う、恐怖おっさんな同僚がいるのだ。歳は一回りも上だが、応援業務という立場の問題か、それとも人件費けちけち作戦なのか、彼はあちきの上司ではなく、二人とも平社員なのだ。給料は倍以上違うらしいが。きぃ!

○色々考えた結果、右手で蝋燭を掴む事にした。決定、いやっほう!って、何がいやっほう!だ、あちきよ、ざざむしにやられるかも知れないのだ。とはいえ、暗黒の中の布団蒸しにも我慢の限界がある。このままではPOW0、一時的発狂、窓ガラスを叩き割り、シャッターをぶち壊し、ベランダから飛び降りてしまい、その後ろからベッドが落ちて来る。やっと体の向きを変えベッドの下から仰ぎ見ると、闇夜の中に、真っ赤な光がベテルギウスの方向に光っている。・・・。何故クトゥルーの叫び声か、あちきよ。100人いても2,3人しかわからぬネタだな。しかも、あちきのプレイヤーキャラはあちき仕様になってる為、素手で窓ガラスを叩き割る事も出来ないほど貧弱ではないか。もき。

○再度、思い切って右手を突き出す。と、それっぽい感触。布団にそのまま引きずり込む。うみゅ、蝋燭ゲーット!次はライターですわねっ!

  「kasumi、もう朝・・・、お前、何持ってんだ?」

○その時、待ち望んでいた時にはあれほど姿を見せ無かった救助、父が廊下からドアを開けて部屋の中を覗き込んでいた。「あ、こ、これは、えっと、頭に落ちて来たから」「ちゃんと置いておかないからだ。あれ、電気、切れてたのか」「あ、そみたい。とりあえずドア開けておいて下さい」

○こうして、父のおはよう攻撃により、あちきは光の中に舞い戻る事が出来ました。にしても、自分の娘が布団に包まって、十字架の形をしたでっかくて赤い蝋燭を持っているのを目撃するのはどんな気分なのであろうか。恐くて、聞けない。

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