かすみ荘 - 雑文:黙って人にあげるのも気が引ける
[もどりゅ]

184. 【鑑識を呼ぶまでも無い】 (2002.05.20)



○あちきの職場の右隣の席には平林さん(仮名)という男性が座っている。過去に、その平林さんを雑文に取り上げ、42歳独身(2002年5月現在)の平林さんの奥様を広く募集したが、残念ながら応募連絡が一つも無かった。その平林さんの話を書くのです。

○平林さんはぴちぴちの独身貴族42歳である。何処がぴちぴちしているのかと言うと、正直に言わなくてはいけないだろう。ごめんなさい、何処もぴちぴちしていません。何となく書きたかっただけです。長男ではあるが、弟家族が実家に一緒に住んでいる為、小姑ではなく、小舅になっている。42歳でも小舅である。というか、小舅って言葉はあるのか、あちきよ。そんな訳で、早く結婚したいらしいが、平林さんの好みは自分よりかなり年下で、色々と細かいこだわりがあるので見つからないでいる。

○そんな平林さんの魅力をお伝えすべくなお話である。これを読んで、「いや〜ん、平林さん素敵ぃ、今すぐ私をさらってぇ」という女性の方がいらっしゃったらば、あちき、誠心誠意を込めて橋渡しを致します。ええ、ええ。尚、男性のご応募は受け付けておりませんので悪しからず。

○平林さんは仕事が出来る、らしいのだ。らしい、というのはあちきが見ている平林さんは大概、画面を見て一人で会話しているか、鼻に指を突っ込んでいるか、居眠りをしているか、大声で電話で会話しているか、足をばりばり引掻いているか、誰かと話をしている所のどれかなのでらしいとしか言い様が無い。しかしながら、技術者としての能力を褒め称える人が多いので、仕事は出来るのであろう、多分。

○そんな平林さんは脂性と言うのだと思うのだけれど、やたらと手がぺたぺたとしている。どうしてあちきが平林さんの手がぺたぺたしている事を知っているかと言うと、二人はお手々繋いでらんらんらんな、仲だから、というのはあちきの背筋が薄ら寒くなる嘘であるが、平林さんは他の人が使用中のパソコンを使いたくなった時、断りの言葉と同時にマウスを握っている作業中の人の手の上に、己の手を重ねるからだ。これが恋人同士のすい〜つな関係で手を重ねられるのであれば、「いやん、人前で恥ずかしい」などという言葉を発しつつ、唸りを上げる平手で容赦なく相手の顔を往復でひっぱたく所であるが、所詮仕事仲間であるからして「触んないで下さい」とか「又平林さんがセクハラした」とか無言で振り払って手を退ける位の対応しか出来ないのだ。あちきもそういう目に何回かあって解っている。平林さんの手はぺたぺたしている。

○そのぺたぺたした手のせいであろうか。平林さんが触った所には、指紋のひとすじひとすじまでくっきりと、手の皺のひとすじひとすじもはっきりと、手の跡が残るのである。しかも、平林さんは仕事中に頭をばりばり引掻いたりするので、抜け毛防止の為に洗髪をあまりしないポリシーで貯められた頭の油がその手にばっちこついているのである。知らずに彼の使った後のマウスパットに手を乗せたらば、手首の所がねっとりしていて、悲鳴を上げた事があちきはある。さらに、何故かいつも手が黒い。どうやら付着している油分にコピー用紙やシャープペンのトナーがついてしまうらしい。

○そんな訳で、あちきの机の上に置いておいた、おとっときのお菓子、デメルの箱入り子猫の舌型チョコレートが大量に消えた件に関して、捜査をするまでも無く平林さんが被疑者として浮かび上がっている。このチョコレートは一箱1000円以上する高級品であり、あちきが煮詰まった時に脳みそに糖分を供給する為に購入した大切な品なのである。そのチョコレートの箱置いてある机上周囲には、異常な数の指紋が付着しており、箱には、黒い指紋がばっちこついている。関係者指紋として、逆隣に座ってる原さん(仮名)とあちきの指紋も検討してみようと思ったが、根本的に大きさが違うので除外した。

○恐らく、本人を尋問すれば自白は得られると思うのだが、もっと大変な問題が一つ残っている。このチョコレートは薄く延びた形状をしているのだが、全部盗られたのではなく、数枚残っているのである。もしも、残っているチョコレートを被疑者が触っていたとしたら、もしも、あの、被疑者の癖となっている鼻をほじくった後の手で触っていたとしたら。

○あちきはこの食べる気の起きない、でも、お高いチョコレートをどうしたら良いのでしょうか。

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