かすみ荘 - 雑文:ちょっと間違えたのだ
[もどりゅ]

201. 【屋上でランチ】 (2002.07.03)



○高校生の頃の話である。毎日の様にうまい棒(サラミ味)をばりばり食べ、水に漂う浮き草の様に仕事をし、少年サンデーを愛読し、駄目文章を書きたれているあちきにも、高校時代があったのだ。ういうい。どんな生活をしていたかと言うと、毎日の様にチョコレートを食べ、水に漂う浮き草の様に授業をうけ、少年サンデーを愛読し、駄目コスプレを行っていた。どうやら昔から駄目だったらしい。

○そんなこうこうせいのあちきであるが、天気が悪くない日は毎日屋上でお昼ご飯を食べていた。何でお昼ご飯を屋上で食べるかと言うと、いじめられていて教室で食べられないからです、というのは嘘で、仲の良い友達とクラスがばらばらだったからでございます。

○そんなある日、友人まゆみちゃん(仮名)がお弁当の包みを開けて首を傾げた。
 「あれ?丸いタッパーが二つ入ってる」
 「ほんとだ」
 「珍しいね」
 「うん、いつもなら一つなのに」

○ぱかすっと両方のタッパーを開けると、一つにはご飯、もう一つには何やらかに玉の様なものが入っている。
 「何これ?」
かに玉状の物を分析すると、茹でたジャガイモと人参、湯がいて裂いた鶏肉を溶き卵でまとめ、片栗粉でとろみを付けた様なものである。
 「夕べの残りとか?」
 「ううん、昨日はカレーだったし」
 「かすみちゃん、何だと思う?」
何故斯様に奇妙な物を見た時に、いつもあちきに一番に意見を求めるのだ、友よ。

○今も昔もあちきは知ったかぶり星人なのである。実生活の中で、役に立たないくだならいへだらな事を知ると言う事に意義を見出す、駄目人間である。何とか答えを見つけたい。うーんと、うーんと・・・。あ、そだ、あれに似ている。
 「多分、親子丼、なのでは」
あちきの苦し紛れの推理に、皆は納得してくれる。
 「あ、そっか」
 「じゃあこれ、載せて食べるんじゃない?」
 「じゃ、何で分けてあるんだろ?」
 「ご飯におつゆがしみこんじゃうからじゃない?」
 「あ、そだね」
皆の見守る中、まゆみちゃんは片方のタッパーの中身を、ご飯入りのタッパーに移した。
 「うわぁ、本当に親子丼になった¥」
 「美味しそうー」
 「どうどう?味?」
 「あれー?味うすーい」
 「あ、あたしのお醤油あげるよ」
 「ありがとー」
こうして、謎の昼食は親子丼と言う事で落ちがついた、筈であった。

○翌日、まゆみちゃんが実に微妙な表情であちきの机の前に座った。
 「昨日のお弁当ね」
 「?」
 「おれ、親子丼じゃなかった」
 「そなの?ごめんね」
 「いや、かすみちゃんは悪くないんだけどさ・・・」
今ひとつ歯切れが悪い。

○まゆみちゃんのお弁当をナプキンに包んだのは、まゆみちゃんのお父様だったそうで、キッチンの机の上にタッパー2個とまゆみちゃんのナプキンが置いてあったから、愛娘の為に包んでおいたのだと言う。

○タッパーをキッチンの机の上に置いておいたのはまゆみちゃんのお母様で、昼間出かけてしまうので、それを用意しそこに置いたのだと言う。

○まゆみちゃんの似非親子丼は悪いタイミングの重なりにより、我が母校のお昼の屋上で、お弁当として存在してしまったのだ。
 「うちにね、犬がいるでしょ」
 「あ、さくらちゃん。可愛いよね」
 「あれね、桜の餌だった」
 「はう?げふげふげふ」
危うくジュースが器官に入りそうになるあちき。
 「お母さんが出かけるから、桜のお昼にって、おばあちゃんにあげるのを頼んでたんだって。桜さ、一日3食食べるの」
 「うん」
 「最近お年寄りだから、消化に良い様にって、ご飯あげてるのね」
 「うん」
 「ご飯だけだと栄養が偏るから、玉子とか野菜をあげてるんだ」
 「うん」
 「でね、味が薄かったんじゃなくて、桜のだったから味付けしてなかったんだって」
 「そなの?」
 「うん。おばあちゃんに分かり易い様にって台所に置いておいたら、私のお弁当だと思ったお父さんが気を利かせて包んでくれたんだって」
 「じゃあ、まゆみちゃんのお弁当は?」
 「おばあちゃんが食べた」
 「え、じゃあおばあちゃんのお昼は?」
 「お母さんが戻ってから食べた」
 「お母さんのお昼は?」
 「冷やご飯をお茶漬けにでもするつもりで取っておいたから、それを煮て桜のご飯にしたって」

○素晴らしい、素晴らしいぞ、まゆみ家。ぐるぐると廻って、無駄が無い。無駄は無いが、まゆみちゃんの心にはちょっとした傷が付いてしまった。そう、犬の餌を食べた自分。純真な女子高生なのである。乙女の園、女子高校の優雅なランチのひととき、屋上で食べたお弁当が犬の餌だったのである。

○結局、あまりにも悔しかったのか、その事をお昼に自分からばらしてしまい、しばらくの間「今日は桜ちゃんのご飯じゃないよね?」とからかわれたのもちょっと可哀想である。そして、まゆみちゃんに「バカァ」となじられた、まゆみ父も可哀想である。合掌。

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