かすみ荘 - 雑文:最近は死ににくくなったよ。
[もどりゅ]

225. 【あちきには理解出来ない人々】 (2002.10.19)



○「うみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅみゅ〜ううううううう」
 あちきはひた、と液晶ディスプレイに目を据えてうめいた。別にこの液晶ディスプレイが憎い訳でもなく、このパソコンの向うにいる筈の、異国の方々の思考回路が理解できないだけであるのだが。

○ヘルブレスなるオンラインゲームをやっている。自分の分身であるキャラクターを作成し、その成長バランスを自分で決める事により、キャラクターのタイプを設定し成長させていくゲームである。このサーバーの中の仮想世界には、二つの国があって、その国の人間しか入れない国の奥地、相手の国の人間も制限時間つきで入れる町や山、それを繋ぐ迷宮やら原っぱやらがある。おたがいの国は敵対しており、国に貢献する為には相手の国のキャラクターをぶっ殺さねばならない。もちろん、各キャラクターにはパソコンの前に座るプレイヤーがいる訳だから、誰かをぶっ殺せばそのプレイヤーがショックを受けるのは当然である。ちょっとしたペナルティで再スタート出来るけど。また、プレイヤーを持たないモンスターも存在する。彼らは仮想世界のサーバーが作り出した共通の敵であり、キャラクターを育てる為に非常に重要な存在であったりする。勿論、モンスターもキャラクターをぶっ殺しにかかってくるので油断は出来ない。

○と言う事で、あちきも幾度となくぶっ殺されているこのゲームであるが、あちきは基本的に臆病なので、可愛い自分の分身であるmisono(キャラクター名)が一人でいる時は自国内の相手国のキャラクターが来ない、さほど強くないモンスターがぽこぽこと湧いて出る所でちまちまと経験値を稼いでいる。このゲーム、他のプレイヤーと組んで戦うパーティープレイというシステムがあって、それを使うと協力し合って戦えるという利点があるのだが、いかんせんあちきのお友達は皆強く、ネットに繋いだ時はすでに皆、強い敵がばんばん出てくるところに集結しようとしていたりして、あちき一人じゃ到着するまでに死ぬね、と思い遠くからまるでチャットをROMるかの様に皆の幸せを祈ったりしていたりもする。あ、それ以前に方向音痴なのもある。仮想世界広いから。

○つまり、キャラクターは通常相手国(あちきの場合、エルバイン国の人間になったので、アレスデン国の人間が敵)の人間と、モンスターと戦う事になる、筈である。しかし、それは筈なのであって、自国の人間を殺すやつもいるのだ。あちきのmisonoちゃんは大魔法使いを目指しているので、余計な力や体力の数値は殆ど成長させていない。勿論、画面上で数値の低さは分からないのだが、持ち物である程度推測する事が出来たりもする。杖を持っているやつは大概魔法使い系で育てられているので、接近戦に弱い。それを知っていて、なおかつ金と経験のためには非道な事も気にしないぜ、へい、とかいう輩がいきなり殴りかかって来るのだ。死んだキャラクターは持ち物を落とすので、それを売るとお金になるのだ。しかも、魔法使いが持つ杖は下取り価格がお高い。マントなんかも高価である。殺す事により己が犯罪者としてペナルティを受けても、そんな事気にしないよ、ははん、という輩がかなりいるのだ。戦士系に育て、魔法使い系を狙う。つまり追いはぎである。

○もっと極悪なのは己は犯罪者にならない様に自国の民を殺す輩がいる。魔法能力を高め、相手の動きを封じる麻痺の魔法を他人にかけ、さらに、動けなくなった獲物を狙う、モンスターに攻撃力アップの魔法をかけやがるのだ。そして、哀れな獲物が倒れ伏した時、我先にと犠牲者に駆け寄り、落としたアイテムを拾うのである。

○そんな訳で、己さえ良ければ他人など良いのだ、という輩がごろごろいる仮想世界では、一応プレイヤーの交流が図れる様に会話モードがある。プレイヤーは世界各国の人間であるからして、基本は英語で会話する。みゅ、あちきとしては不本意だ。世界共通語といえば、エスペラント語ではないか。みゅうみゅう、って、エスペラント語知らないではないか、あちきよ。不本意云々は別として、あちきは英語を全く理解出来ない。読めないし、話せないし、単語すら知らない。ゲーム中で使われる単語が少ないのが唯一の救いではあるけれども・・・。ので、あちきは知らない人に声をかけたりしない。子供の頃から言うではないか、知らない人についていったりしてはいけない、と。ましてや、国際カラーの違う外国の方々である。いきなり斬りかかって来るのである。訳が分からない。しかも、自分の主張は通そうとしてくるのだ。そして見ず知らずのあちきの分身、misonoちゃんにこう言って来るのである。「回復」と。

○魔法を使うにはキャラクターの頭を良くしたり、魔力を上げたりしなくてはならない。すると力を上げるのが遅れる。さらにお金も使って魔法を買わなくてはいけない。つまり単純な攻撃しか出来ない単細胞の狩猟系バカシンプルな戦いを好む人たちは回復手段が非常に少なくなるのだ。おとなしく突っ立っていれば自動回復するのであるが、血気盛んな基地外はその間の時間をロスと考える為、近くにいる赤の他人に助けを求めるのである。相手がどう思うかなんて考える頭脳が無いし同じ国の人であれば助けてくれると思うらしい。

○とはいえ、魔法をかければマジックポイント、このゲームで言うmanaを消費するのである。これも自動回復するとはいえ、それが無くなれば攻撃用の魔法を使えない訳だから、モンスターを狩る事が出来なくなり、結果、経験値を獲得するのが遅くなる訳だ。よって、大概の魔法使いはそれを無視する。すると「俺が大変なのにお前冷たい」と逆ギレし、斬りかかって来る。恐ろしい事だ。うう、海外の連中(それっぽいキャラクター名なんだもん大概の基地は)は自分勝手な生き馬の目を抜く資本主義のキティなのか?

どうやら彼らには
 回復薬を常備する概念は無く、ピンチには「回復〜」と騒ぐ機能
 毒消し薬を常備する概念は無く、ピンチには「解毒〜」と騒ぐ機能
 減ったスタミナ(これがないと高速移動である走るが使えない)は大人しく回復させるという概念は無く「スタミナ回復〜」と騒ぐ機能
などが登載されているらしい。しかしながらこれはまだ命に関わるかも知れないという親切な考え方も出来る。袖擦りあうも多少の縁。少しくらいなら助けてあげてもいいと思わないでもない。が、甘やかすとさらにとんでもない機能が起動し始める。
 自分の実力が低いので「攻撃力を上げる魔法をかけて〜」と騒ぐ機能
 自分の体力が低いので「防御力を上げる魔法をかけて〜」と騒ぐ機能
 普通のモンスターと戦うとヤバイので「反撃しないモンスターを魔法で出して〜」と騒ぐ機能
そんなものが次々と追加されるのだ。ある意味レベルアップ?ある意味スキル取得?しかも、ゾンビの様に増え続けるくれくれ君の集団。

○という訳で、余りにもしつこい戦士に麻痺呪文を発動させてみた。一応対人となるとそのキャラクターの魔法抵抗力があるので、かからない可能性も結構ある。だから、脅しのつもりだったのである、が。「no!」絶叫する戦士の人。絶叫といっても、会話機能によって彼の頭上にno!という文字が現れたに過ぎないが。げしげしげし。動けなくなった彼に、近くのサソリモンスターがさくさくと襲い掛かる。うわぁ、恐い〜。やっと麻痺が解けたらしく、戦士の人はmisonoちゃんに駆け寄ってきた。やるのか?やる気か?みゅ、防御力を上げる魔法をかけていると戦士の人はmisonoちゃんにこう言った。「お前、ハッカーだな」己が弱いだけではないのか。だいたいさっきからおにょれの攻撃は当たってないし。むみゅう。真のハッカーは面倒な市民になどならず、ゲームのシステムをいじくって最強キャラを作成し、端から一般プレイヤーを殺戮したりするので、こんな所で自分の戦力強化などしている筈は無い。

○こいつには更なる脅しが必要のようだ。攻撃力二倍、魔法攻撃防御、弓矢攻撃防御を自分にかけ、麻痺呪文を唱え始める。と、ダッシュで逃げ始める戦士の人、ダッシュで追うmisonoちゃん、戦士の人の頭上には走りながらも「help」とか「no」とか「stop」とか表示されている。みゅ〜う、器用。あちきも誰かが助けに入ったら、ちょっと面倒な事になるなと思ってはいたのだけれど、周囲のたくさんの人たちの頭上にはこう表示されていた。「hahaha」と。

○必死に助けを求める人を見て、笑う住人。そんな仮想世界で今日も戦うのだ。・・・。って、一度も敵国の人と戦ったこと無いなぁ・・・。

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