かすみ荘 - 雑文:その後ね、こっちも咳き込んでね・・・
[もどりゅ]

233. 【季節外れの運動会】 (2002.12.09)



○此処に一葉の写真がある。中央には体操着を着た小学校低学年位の女の子が必死に走っている姿があり、背景は応援する子供や大人で埋まってる。また、彼女の前後には誰もいない。そして彼女は微笑を浮かべて楽しそうに走っている姿をそこに切り取られている。

○彼女は子供の頃のあちきであり写真によると、あちきは小学校5年生らしい。しかし、ためすがめつ眺めても、低学年に見えて仕方が無い。実際、この時点で身長が130に届かなかったし、体重も20キロちょっとだったような気がする。自分の体格の悪さ、全然大きくならない歯がゆさに身体検査の時は全く興味が無い顔をして、結果は聞いてもすぐに忘れてしまったくらいである。早生まれ、2月生まれであったのも原因の一つだったかもしれない。けれど、当時のあちきは勉強さえ出来れば構わないと思っていた。自分よりも大きな人に勝つには、体力で勝負しても無駄なだけであり、学校の勉強をいかに理解するかに必死になっていた。

○さて、この写真の背景であるが、これはあちきの毎年恒例の姿である。すなわち、中学年までは身長差で走っていた徒競争の、そして高学年になってからはタイム別になった徒競争の姿なのだ。一見するとぶっちぎりの一位になって、微笑を浮かべつつ、ゴールに向かっている様であるけれど、実際のところはぶっちぎりのビリなのである。引いて撮った写真であるからして、ここまで清々しくビリになれる才能をもった、ちびっこあちきには最早涙を流すどころか、よくやったと言ってやりたい。当時を振り返ってみるに、この微笑みはもうどうしようもない己に笑うしかなくなり、照れ隠しを通り過ぎ、どうしてあちきはこんなに上手く走れないのか、おかしくて仕方がなくなってしまっているのである。

○考えてみれば、喘息を患ったり、学年一低身長、低体重、剣道やら体操倶楽部を断られるちびっこあちきが、上手く走れないのもありうる話であり、また、走れなくってもいいや、などと最初から思っている人間が走れるはずないのである。しかも、理論的にどうやったら速く走れるかの考察までしちゃったくらいで、体を動かす事を理論的に小学生が考えてところで、どうなる訳でもない。そうはいっても、妹はいつも一等か二等、弟も三等まで入るのに、姉として二人がからかわれているというのを聞いて何とかしようと思う優しいちびっこあちきなのだ。無駄だったけど。

○そんな訳で、走る事を諦めた辺りがこの写真である。そしてまた、身長順で走る順番をタイム順にしても、一番遅い組でビリであったから、筋金入りの運動音痴といって差し支えない。それにしても、腕の振り方は横にぴらぴらだわ、足は全然上がっていないわ、よくもまあこんなに効率の悪い走り方を身に付けていたものである。アニメの女の子走りもこれには及ばない。

○そうこうしているうちに、中学二年くらいで劇的に状況が変化する。喘息の発作が殆どなくなり、周りの女の子の体形がふっくらとしてきて、逆にあちきは身長がぐんぐん伸びたのである。いままで、のててて、と走っていた体が、しゅたたたに代わったのだ。気がつくと、リレーの選手にまでなっていたのである。高校になってからは、演劇部に身を置きつつも、体育の先生に陸上をやれと言われるくらいになっていた。

○その後、20歳位に喘息の発作が再発。現在は30メートルほどの距離を走るだけで、くらくらと倒れこんでしまうありさまだ。お陰で体を動かすのは好きだが、走るという事に激しく嫌悪感を持っている。それに、社会人になってまで走りたいとは思わない。有酸素運動の歩くで充分だ。そんなこんなで走るを拒否しているあちきであるが、ちょっと前にゲーム内のダッシュ機能で競争をしようという企画が上がった。それも断固拒否したのだ。徹底的である。徹底的駄目人間である。

○そんなあちきが先日ダッシュをかますはめになった。この寒空に50メートルもダッシュ。ちょっと家の近所のコンビニに行ったらば、やつが現れたのです。コートマン(露出狂)が。この気温が10度以下になる真冬に、やつは現れたのです。おかげさまで家までダッシュです。走りたくないという訳にも行きません。だって、追ってくるから。

○しかしながらやつはあえなく追撃を中止した。物凄い咳き込み、あちきが苦しい時に出すのと同じものを聞いて、あちきが振りかえると、やつは体をくの字に曲げ、げふげふげふと咳き込んでいた。おとっつぁん大丈夫?心配かけるなあ、おみつ。それは言わない約束でしょう、さあ、おかゆが出来たわよ・・・。

○調子悪いならそんな事しない方が・・・。そう思いつつ、最後の力を振り絞り、ダッシュで帰りました。死ぬかと思った。

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