かすみ荘 - 雑文:己に素直な悪い子ではないお嬢さん
[もどりゅ]

244. 【葱を抜け】 (2003.01.15)



○小姑、あちきの今の立場を言葉で表現するとこうなるのだけれど、この定冠詞って、聞こえが悪くありませんか?

○お正月に弟夫婦が姪っ子を連れて泊まりに来た。お嫁さんは21歳のぴちぴちお嬢さんである。お子さんは0歳で、なかなか可愛らしい。が、可哀想にあちきの赤ちゃんの頃に酷似している。あちきは子供の頃、男児と間違えられる毎日を送っていたので、つまり姪っ子瓜ちゃんは、中性顔で、この先姪っ子の人生に一抹の不安を感じるあちきだったりするのです。

○さて、そんなお嫁さん、うりちゃんは可愛らしくてほわわ〜んとした空気の持ち主である。ので、ぽんや〜っとしている分には可愛らしいお嬢さんであり、そしてまたうりちゃんはいつもぽんや〜っとしていたりするのだ。そして、その、ぽんや〜はどんな時でも発揮されるのだったりする。

○葱、といえば、野菜である。関東の葱は主に白い部分が多く、この白い部分を増やす為に、葱を作る人は葱の先部分を除き土をかけている。だから我が家では、葱は土に埋めて保管している。勿論、スーパーで買ってきた葱にはそのような事はせず、母の親戚、農家の皆様からいただく葱のみを庭に埋めているのだ。そして、事件はこの葱から始まった。

○正月である。父、母、妹、弟、お嫁さん、あちき、と成人6人が食卓を囲むのだから、やっぱ鍋でしょ。と母が言い出した。大人数の鍋は美味しいという主張。おっけぃ、母、貴方のおっしゃる事は良くわかる。が、2人でも貴方が鍋をやっている事を、あちきは知っている。ともあれ、鍋なのである。だから、犬の散歩に行っている間、葱を抜いておいて欲しいという母。葱葱葱、そんなに葱が重要か?いえいえ、あちきも葱は好きですが、そんなに念を押さずとも。

○とりあえず、仕事は分担しようという話になり、母が決めた役割が、
 父=瓜ちゃんを抱っこし日光浴を兼ねて犬の散歩に付き合う
 母=ゆんたん犬の散歩
 弟=ごうすけ犬の散歩
 妹=お風呂の掃除
 嫁=葱を抜く
 あちき=ストーブの灯油を補充、洗濯物をたたむ
といったものであった。

○が、うりちゃんはあちきがストーブの灯油缶を持って、近くをウロウロしていても、ぼんや〜っと食卓の椅子に座ったままである。
 「散歩のお見送り行かなくていいの?」
 「寒いから」<小声
うりちゃんは、こともなげに発言。玄関すら寒いので行きたくないという。その行きたくない所に、あなたのラヴラヴダーリンと、貴方の義理の父と母が行っているのですが?勿論、義理の姉もその寒い玄関を通り、さらに寒い物置の前のふきっさらしに行くのですが?つい、嫌味が口から出てしまった。
 「ごめんね、(彼女はダイニングと玄関を隔てる扉の隣の椅子に座っている)ドア開けちゃって。寒いでしょ」
 「はい〜」
みゅう!うりちゃんは事も無げに言い放った。はい〜と。うりちゃんの凄いところであり、美徳であるところは、嫌味が一切通じないところである。あちきが寒いでしょ?と聞いたから、彼女は正直に答えたまでである。寒い、と。そして、その素直なうりちゃんは葱を抜こうと言う気は毛頭無い。何故ならば、うりちゃんは素直だから、己に素直だから、即ち、寒いから。一応お姉さまとして、円滑な義母、義娘の関係を保つ為のアドバイスはしてみた。
 「うりちゃん、早く葱抜きに行かないと、暗くなっちゃうよ」
 「う〜ん」
以下、無言。流石にこれ以上押して言う気にはなれないので放置する事にした。

○さて、散歩軍団が帰宅。まだ葱が無いという事が判明すると、弟がうりちゃんに葱を抜け、と言い出した。
 「皆色々やってるんだから、ちゃんとやらないと駄目だろ。庭に行くだけだからさ」
 「う〜ん、だって寒いんだもん」
 「寒いってもすぐなんだから」
 「え〜、やだ」
 「じゃあどうするんだよ」
 「抜いてきて」
頑固だ、頑固だぞ、うりちゃん。嫌な事をはっきりと、しかも、夫の実家ではっきりと言える君は素敵だ、ぐれいとだ、輝いているよ。って駄目すぎです、うりちゃん。そんなふうに輝くなああぁぁああ!

○攻防はしばし続き、そして、予想通りというかなんと言うか、ぽてぽてと、とぽとぽと、我が弟は庭に葱を抜きに行くのでした。

○その後、葱の件も含め、皆が何かしている時に一人だけ座っているのってどうよ?とか、自宅では構わないけれど、出先で足を広げて体育座りするのは如何なものか?とか、使った食器を運びもしないって?などときつくならない様に母が注意したらしいのであるが、それに対してうりちゃんは涙ぐんでしまい、その後は続かなかったと聞いた。そしてまた、その後も帰るまで、瓜ちゃんの洗濯物は母が行い、食べた食器はそのままで、中身がみえちゃうよな体育座りを続けたうりちゃんに、あちきは賞賛の眼差しを向けてしまったりしたり、しなかったり。

○そして帰宅途中の車の中で、うりちゃんは弟にこう聞いた。
 「面白かったね。いつから一緒に住むの?」
今のままじゃ住めないね、という弟に、だって一緒に住んだ方が楽しいし、ご飯も楽だよ、といううりちゃん。実に大物である。

〇雑文のTOPへ〇

前へ雑文のトップへ次へ