かすみ荘 - 雑文:贅沢らしい
[もどりゅ]

252. 【新居っていうのはね】 (2003.03.09)



○結婚するのである。生まれてこの方結婚と言うものは一度足りとしてした事が無い訳だから、やらなくてはならない事全てが始めてばかりである。とはいえ、この日本では、数分に一度、誰かと誰かが結婚しているし、誰かと誰かが離婚しているわけだから、さほど難しい事はあるまいまい。要は、役所に行って婚姻届を出せばいい訳だ。しかも、24時間受け付けている訳で、今すぐ結婚したければ、既婚暦の無いあちきは今すぐにでも誰かの配偶者である。

○しかしながら、昔から「衣食住足りて人となる」とも言うように、着る物と食べる物と住むところが無いと、人としてちょっとどうかという事になっちゃうらしい。考えてみれば、公園などに住まわれている自由な人々も、ビニールシートやダンボールで簡易住居を作られているし、駅の構内で寝られる人々も、座布団の一つや新聞紙などで陣地を作ったりしているではないか。む、今ふと思ったのだが、あのビニールシートやらダンボールやらの移動自由、組み立て式住居と言うのは、モンゴルのパオに似ている気がする。むむむ、侮れない。確かにパオの方が断然上だけど、移動自由、組み立て簡易、雨にも耐えるような仕様にどんどんグレードアップしていくんだもの。

○衣食住の衣は、あちきも社会人さんなので、己の財力で購入する事が出来る。最近は、自前のアトピー性皮膚炎が表面化しているので、耐久力の無いストッキング、スカートなどというアイテムを買わなくなり、低コストが実現できている。そして食、やはり社会人さんなので、ひとつきの間飢え死にしない程度の財力を持っている。作る為の材料も買えるし、外食もよほど毎日おばかな食生活をしない限り、お金なくて食べられないよう、と嘆く事は無い。問題は住である。今まで両親の財産である我が家にパラサイトしていた訳で、結婚するとなると出て行かねばならない。

○無論、両親と同居すると言う作戦はあるのだが、あちきの素晴らしいケイオス作成能力に、我が父は日夜悩んでおり、それに同居するとふた世帯が同じ家の同じ階に居を構えることになり、いささか窮屈と言うか、精神安定上好ましくない。せめて、我が家の一階、お客様おもてなし部分が二部屋あり、リビングをおもてなしゾーンとすると変えてしまえば何とかなるのであるが、いかんせん一部屋しかないのが事実であり、また、我が家を虎視眈々と狙う長男たけっぴくん夫婦がいる限り、この家に住むわけにはいかないのである、のである。

○さて、夫君となるべき某雑文書き、最近うどん打っていませんは、あちきに斯様な提案をした、「どの辺に住みたい?」と。考える必要の無い問いである。簡単である。横浜だ。あちきの生まれ育った横浜、住民税の高い横浜、都市計画で莫大な借金を背負った横浜、ほとんど市民の行かない市民美術館のある横浜、住むだけではまっこと言われる横浜以外、どこを検討すればいいのであろうか。おおまけにまけて、川崎である。住み慣れた、使い慣れた場所から離れるなど基本的にしたくも無いのである。それに、あちきが子供の頃あこがれた横浜の私立学校に子供を入れる事だって可能だ。ああ、白×合学園、双×学園、首を洗って待っていろ。

○雑文書きの人は田園都市線だの、大井町線だの、多摩川線だのを検討していた様であるが、あちきが住みたいのは東横線である。東急東横線。あちきの実家の最寄駅である。乗り慣れた電車を普段に使うのが一番なのだ。それを告げると、むうむうと唸りつつ「まあ物件を集めた見て下さい」と言って次にとんでもない会話を展開をし
やがったのだ。

 雑文書きの人「ということで、今物件を探していたりするわけです」
 あちき「ふ〜みゅ」
 雑文書きの人「ええと、あなたはこの中でどこが良いと思いますか?間取りはどうしましょう?」
 あちき「う〜みゅ」
 雑文書きの人「もちろん家賃と相談ですが、なるべく広いところがいいとは思ってます」
 あちき「みゅみゅみゅ〜」

雑文書きの人が今までに熟考した結果をあちきに説明してくれるのだが、どうもあちきの考えと言うか信念と言うか、そおいうものから話がそれて行ってしまっている。とりあえずあちきは、己の考えうる限りで一番可愛く見えるかもしれない角度で上目遣いに 雑文書きの人を見つめてみた。

 雑文書きの人「?…ええと、何か問題でも?」
 あちき「あのね」
 雑文書きの人「はい。御意見があるのであれば、どうぞ」
 あちき「あのねあのね…」

あちきは少々いいくにそうに、かつ、効果的な表情を必至に演出し、気合を込めて言い放った。
 「あちきはマンションが怖いのれす」  
(続く)

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