かすみ荘 - 雑文:疲れた、疲れた
[もどりゅ]

270. 【撮影だけでよかったと】 (2003.07.07)



○最初に、我が敬愛する柳昇師匠のご冥福を祈って。

○日本人と言えば着物である。着物と言えば日本人である。多分。考えてみれば着物と言う言葉は実にわかりやすい。着る物と言っている訳だから。とはいえ、今の日本人の標準の着る物といえば、海の外からやって来た洋服と言うやつで、こやつらにはホワイトシャツだの、パンツだの、おされな個別名詞がついている。日本人の民族衣装着物は、それ一枚で上下を覆ってしまうのだから、着物という一言で言い表せるのかも知れぬ。もみゅ!とはいえ肌襦袢だの、長じゅばんだの、お腰だのありまするけどね。

○先日、結婚式をするにあたって、当日は着ない白無垢なるもののさしんをとりにいったのですよ、さしん。そんなものをとってどうするかと言うと、当日のエントランスに飾ったり、この先離婚の危機の時に眺めて「ああ、この時は真面目に結婚しようと思ってたなりなどと懐かしんで乗り越えたり、サイトに晒してネタにしたりするのにどうかという次第なのでありまする。あ、勿論、コスプレという魅力的なぽいんつもありまするし〜。

○そんな訳で、いそいそと出かけてきたのです、さしんを撮りに。にしても、高々さしんを数枚撮るだけであるにも関わらず、半日がかりだというので仕事も休みを出して当日に望んだのですが、一言で言うと「疲れる」の一語に尽きる訳で、よくもまあ白無垢という日本の美が廃れなかったものだとつくづく思ったのでする。だって、頭は重いし、体が苦しいし、災害などが起こったら死ぬしかなさそうな動きが束縛される衣装な訳で、それでも連綿と白無垢ありがたや感は続いていくのだろうななどと余計な事も考えたり。

○先ずは長じゅばんの上からバスローブを着て、頭にネットを被せるところからスタート。出来そこないのどんぐりみたいになったらお化粧開始。最近の流行は真っ白にしない事だそうで、その人の肌の色にあった色で仕上げるのだそうな。とはいえ、やっぱり普段よりも白くなる訳で、ぺてぺて、ぱてぱてと顔を叩かれながらおけえけえされると言うなしゃけないあちき。ファンデーションは絵の具みたいなパレットに入っているし、プロの道具って面白い〜と大人しくしていると、暫くは鬘の写真をとったり、うろちょろしていた某雑文書きの人が、大あくびをしながら雑誌を読み始めた。暇になったらしい。曲がりなりにも可愛いと思っているらしい彼女さんであるあちきが、おけえけえされているにもかかわらず、暇になって大あくびである。あちきよりも雑誌の方がいいのである。あまりにも暇そうな雑文書きの人に、係の人が気を回して、早めに袴に着替える事になり強制連行される。どうやらあちきの憤りが係の人にデムパとなって襲い掛かったに違いない。あちきのデムパのすばらな事よ。

○そうして、雑文書きの人の着替えが終わっても、あちきのおけえけえは終わっていなかった。眉毛を整えるのに何でこんなに時間がかかるのだ?またしても暇になった雑文書きの人は、白扇で口を押さえてあくびを連発し始めた。立ち上がってぴこぴこと謎の動きを開始し、我が母が微妙な視線を投げかけている事に気がついていない。注意を喚起したいところだが、あちきはメイクの先生にがっちょり捕まっていて、ここで騒ぐのはちょっとどうかという状態になっているので、我慢していた。が、壁一面に張られた鏡には、骨法なる武術の歩式を実践する雑文書きの人や、太鼓持ちのように白扇でぺそぺそと額を叩いている。あちきの心の中の小人さんが「こんちまた、旦那、どちらにお出かけで?へっへ、廓ですか。あそこはいいですねぇ、旦那なんかは鼻筋なんてぴ〜っと通ってらっしゃるし、姐さんがたも放っておかないよ。旦那、旦那、最近遊びに来てくれないのねぇ、いやん、つねっちゃう。それにくらべてあっしは馬がとろろ食ったようなつらでしょ、もうね、けんつくばっかりで」などというアテレコを始めてしまう。ちなみにに声は金馬師匠で。

○メイク終了。さらにかつらを装着し、角隠しをセットする。この、角隠しをセットするのに、メイクの先生は異様なほど時間をかけていた。どうやらかなりの美学をお持ちらしい。それが終わって、着付けの続きをして白無垢を着せてもらう。きゅ〜、きゅ〜、きゅ〜といった感じに防弾チョッキのような謎のアイテムを着させられ、あっちとこっちで引っ張るもんだから、ふんばってもふらふらしてしまう。「ちょっと痩せすぎですねぇ」などといわれ、タオルでぐるぐると胴回りを補強されせられる。二人ががりで前後を固められて、前のめりになったり、後ろに反ったりしつつ、何とか白無垢装着。すっかり飽きてしまった、某雑文書きの人とフォトスタジオへ。

○思うに、たくさんの人に囲まれて笑え!と言われつつ写真を撮られるのは、バレエの発表会以来な気がするのですよ。バレエの発表会には必ずカメラマンの人が来ていて、写真をとってくれていた訳なのだけれど、その時も笑えと言われたのですよ。が、あちきは笑いませんでした。あはははは。どうも。とるよとるよと宣言されると笑うのがどうも照れてしまうというか、こっぱずかしいのですよ、うみゅうみゅ。ので、撮影でも笑えと言われつづけることしきり。まあ、つきあわされている雑文書きの人はもっと哀れで、
「新郎さん、もっと笑って下さい?」
「もっと笑顔でお願いします」
「目を見開いて下さい」
「首を2ミリ右に、行きすぎです、1ミリ戻して下さい」
・・・・・・。笑顔を作った時、人の目と言うものは細くなるのではないだろうか。顔の向きと言うものはミリ単位でかえられるものなのだろうか。く!あちきが高貴な人であれば、こんな撮影などぽぽぽいと終わるのだろうが、しがない1労働者である。きるきると笑いつつ、何とか撮影をこなし、やっと開放。コスプレの延長と考えたのは甘かったのである。

○そんなにも苦労して撮った写真がこちら(といっても画像粗いです)。大奥、そんな気がしてなりません、ええ、ええ。名前はそう、島田、島田とでもいいましょうか。前にNHKドラマでお局様が層呼ばれていたし、文金高島田っていいますもんね。<どんな落ちだよ、あちき。

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