かすみ荘 - 雑文:クリスマスと畳いわし
[もどりゅ]

295. 【結局お腹がいっぱいになる前に飽きた】 (2006.02.05)
○たたみいわしでお腹をいっぱいにするにはどれだけのたたみいわしが必要ですか?

○たたみいわしが大好きなのですよ、たたみいわし。かたくちいわしの稚魚をたくさん集めて板状に干した食品なのですよ、たたみいわし。軽くフライパンであぶって、一口大に手で砕いて、そのままご飯にのせたり、ちみっとお醤油をかけていただいたりすると、香ばしくてカルシウムががっつりとれるという食品なのですよ、たたみいわし。

○あちきがまだ、会社員だった頃、特別賞与が出たら、お腹いっぱいたたみいわしを食べると決めていたのです。そう、あちきの夢ひとつは飽きるまでたたみいわしを食べる事。うっとり。子供の頃から、たたみいわしは毎朝2枚だったのです。2枚を家族7人で分けていたのです。あちきはお上品なお子様だったので、熾烈な争いをしてまでたたみいわしを全て食べる事が出来なかったのです。たたみいわし大好きな江戸っ子ばあちゃんがお皿を己の近くに配置していたし。うにゅう!おにょれ、ばあちゃん、ちっちゃいあちきにたたみいわしを飽きるまで食べさせたまいっ!

○しかしですよ、会社員になって、己の労働力を売って入手したお金で、たたいいわしをたくさん買う事が出切る様になったのです。ふはははは。待ってろ、たたみいわしっ!

○気合を入れてたたみいわしを買いに行くあちき。某生協で、某イトーヨーカドーで、某ダイエーで、振り込まれた特別賞与から二万円ものたたみいわし資金を引き出して、乾物コーナーのたたみいわしを大人買いする素敵レディなあちき。ふふふふふふふふふ。家に帰ったらこっそりこれを焼くのですよ、ですよ、ですよ。

○帰宅してすぐにたたみいわしを食べる訳にはいきません。何故なら、大量のたたみいわしを買った事が家族にわかれば、何で買ったと聞かれるだろうし、その後待っているのは始めての特別賞与の無駄遣いに対する説教に決まっているのです、です。も〜みゅ、ここはひとつ、皆が寝静まった頃にちりちりとフライパンであぶるのが得策なのです、なのです。

○深夜、盗人気分で大量のたたみいわしパックを手にキッチンに入り、ちんまりとした明かりを点けてフライパンを温め、まきゅまきゅと封を切ったたたみいわしをちりちりとあぶる。サイドにはたたみいわしにちょこっとつける為の醤油の小皿と緑茶。そう、たたみいわしでお腹をいっぱいにするのですから、白飯なんぞの出る幕は無いのです。うみゅみゅう!

○ぱりぱりぽしぽしかしかし、深夜のキッチンでたたみいわしをあぶっては食べ、食べてはあぶり、返す刀でたたみいわしパックの封を切るあちき。ぽしぽしぽし。どれくらい食べただろうか。ふと、視線を感じた。

「な、何奴!?」深夜なので小さく呟き、視線を巡らせると・・・。

「お姉ちゃん、何してるの?」そこには素敵女子高生の妹ちゃんが立っていた。妹ちゃんの視線がつびたひ。

○このままではおかしな姉認定されてしまふっ!あちきはマイドリームを語った。語りまくった。それはもう熱く語った。すると、妹ちゃんは生温かい目であちきを眺めながら、口を開いた。

「たたみいわしが好きなのも知ってるし、ボーナスでたくさん食べたかったのもわかったよ。昼間に食べたらママが文句言うのもわかるよ。だけど、だけどね・・・。

ふっと、視線を泳がせる。

「今日、クリスマスイブだよ。クリスマスイブの真夜中に、こっそり畳いわしを食べるのは寂しすぎると思うんだけど」

妹ちゃんの言いたい事はわかる。そう、恋人達がラヴラヴになるこの日、隠れ畳いわしは寂しいという見解もわかる、わかるが・・・。

「良いの、私、今年も彼氏いないから。今はこれで幸せなの」

○妹ちゃんの生温かい視線を感じながら、畳いわしをぽしぽし齧るあちき。19歳のクリスマスの思い出である。

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