かすみ荘 - 父とわたくし:父と桜餅
[もどりゅ]

ACT020:父と桜餅(2001.03.28)


◇はぁるのうらぁらぁのぉ、すぅみぃだ、がわぁ。春暁一刻値千金などという言葉がございます。春とはまたいい日和の過ごしやすい季節でございます。花粉さえなければ。そんな訳で行って参りました、桜餅を買いに。

◇美味しい老舗の桜餅というのは全国津々浦々数々ありますが、沙羅家では浅草の長命寺の桜餅が一番なのです。かすみ的には道明寺の方が好きなのですが、父が一番を決定する権利を持つ沙羅家ではそんなものはぺぺぺのぺで排斥されてしまうのでした。はらはら(落涙)。

「桜餅、買って来たよ。んでも、もう歯磨きしたんでしょ、明日にでも食べてよ」

「あ、そうなの、よーし、食べよう」

◇・・・。いつもであれば、歯磨き後は何も食べないで通している父が、歌なぞを朗々と歌いながらリビングに向かったのである。歌はもちろん花。冒頭にあげた、?春のうららの隅田川?ってやつ。そういえば高槻さんはこの歌をずっと隅田川だと思っていましたね、違いますよ、花、です。ちゃんと?櫂の滴も花と散る?とか?げに一刻も千金の流れを何に喩うべき?とかなってますからね、え、もうしつこくかすみに言われたって、そうですね。そして高槻さん以外の方には全く関係ありませんね、ごめんなさい。

◇子供のやうな父を放って置いて、テレビを見ようとすると、

「あああああああああああぁ」

父の魂切るやうな悲鳴が聞こえて来たのでした。

◇原因は、わくわくしながら桜餅の包みを開けたらば、桜餅が一個、空を舞ったらしい。そんでもってあわてて桜餅をキャッチしたら、何故かあんこがぽろりと落下。あんこを剛太がぱくり。あんこはわんこのお腹に入ってしまったらしい。餡の無い桜餅など餡の入っていないまんじゅうと一緒である。例えになってないけど。桜餅は五個、家族は五人、父の分は皮だけになってしまったのだ、のだ。ましてや沙羅家で一番の桜餅好きなのに、皮だけ。

「かすみの分、食べていいよ」

「いや、それはなくなるから駄目だ」

◇皮のみを齧りつつ、かなり寂しい顔をしつつも一家の長として娘の桜餅を食べるのは拒む父。かっこいいわ、素敵ぃ。

「でも私、甘いの食べて来たから」

「そうか」 ぱく。

早っ!

◇言うが早いか桜餅を取り一口食べる。こちとら食べて来たといっても側にある言問団子を食べて来たのであり、桜餅は食べていない。この辺りを確認しないのが父の父たるゆえんやも知れぬ。もしも、もしも、だが今月で退職(01年3月)する父の退職金えーんど、保険金を狙ってかすみが桜餅に毒を仕込んでいるかも知れないのに、逡巡無く口にするとはおそるべし。いや、もちろん入れてないけど。

「やっぱりあれだな、歯を磨いてからものを食べちゃいけないな」

◇違うだろう、貴方があわてて桜餅の包みを開けたからそうなったんでしょう。心の中で思いつつも、テレ笑いをしている還暦の父につっこむ事は出来なかった。

教訓:やっぱりあれらしいので、夜の歯磨き後はものを食べてはいけない。


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