かすみ荘 - 父とわたくし:父と原付自転車
[もどりゅ]

ACT022:父と原動機付自転車(2001.04.03)


◇原動機付自転車、通称原チャ(横浜地方ではこう)が欲しくて欲しくて堪らない時があった。自転車では片道3キロも走れば嫌になってしまう高校生の頃である。当時のかすみの自転車は、俗に言うママチャリというやつで、通勤で駅に行くには問題ないのだけど、遠出は不可能な代物だったからぱぱーんと車道を走って行く50ccバイクをうらやましいと思っていたのだった。

◇高校時代はそんなにアルバイトをしていなかったのだけれど、専門学生になってからはアンミラでそれなりに稼いでいたのでバイクを買うぐらいのお金はすぐに貯まったし、免許もさほど難しくも無く所得出来るという事なので、早速父に許可を貰いに行った。ここで、なんでわざわざ自分のお金で全てまかなうのに、父に許可を取らねばならないかというと、バイクを置く場所やらを決めたり、教習所に行く段取りを相談したりしたかったからだったりする。

「駄目だ。車の免許ならいいが、バイクは禁止だ」

◇にべも無い返事である。何故駄目かという説明付である。

◇曰く小さいバイクは転び易い、曰く事故に遭った時に大怪我し易い、曰く事故に遭った時に死に易い、曰く中途半端にスピードが出るので危ない、曰く歩行者である限りそうそう事故に巻き込まれない、曰くバイク対バイクのぶつかりあいで負ける可能性がある、曰く車とぶつかると負ける、などなど。しかしながら最後にこんな恐ろしい事をのたまった。

「かすみ、車に乗っていれば相手は死んでも自分は死なない可能性があるじゃないか。確かに交通刑務所送りになるかも知れないが、自分の命は助かるんだ。昔から言うだろう、命あっての物種って」

◇父は娘の命の方が他人の命より大切な人間であったんである。もしもかすみが免許を取り、人を殺し、相手の親の前でそんな事を言ったらば殺されかねない様な事を頭の中で理論的に組み立てているのである。

◇親の愛は海よりも深いというけれど、他人には意外と非情な父、これでも人にやさしいと言われているのだから、外面だけはかなり良くしている様だ。にしても、何か確実に間違っていると思うぞ。

教訓:結局の所、自分の子供が一番可愛いというのは世の常なのであろう。


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