かすみ荘 - 父とわたくし:父と質問カード
[もどりゅ]

ACT023:父と質問カード(2001.04.06)


◇名刺サイズの小さな紙に、子供の字でこう書かれている。?にじはどうして色が分かれているの?にじとは二児ではなく二時でもなく、虹の事の様だ。カードにはA6サイズの紙が2枚テープで貼られていて、虹というのは、という書き出して虹の出来方、光の色の構成と屈折の解説が、やたらとわかりやすく書いてある。これを見ればどうして虹が出来るのか、虹は何故色が分かれているのかがわかるという優れものだ。

◇この質問を書いたのが、当時小学校低学年のかすみで、解答者が父である。この紙を読んだ事により、かしこうせん(当時、可視光線という漢字を知らなかった)やら、せきがいせんやら、しがいせんやらという魔法の様な言葉を覚えたものであった。そんでもって学校で虹が出た時、先生が「皆見て、虹よ。虹の下には宝物が埋まってるのよ。皆も大きくなったら探しに行くといいわ」と言った途端、「先生、虹は空気の中の水の粒に光が当たって色が出ているだけだよ」と言ってしまい、夢いっぱいのクラスメート健君(仮名)と喧嘩をしてしまいました。先生、夢の無い事を言ってごめんなさい。

◇他にも、海は何故青いのですか?とか、何で地球は丸いのですか?とか、木は何で上に伸びるのですか?とか、鉛筆はどうして字が書けるのですか?などなどなど、山の様な質問カードがあったりする。質問の内容はかなりせこい。海が青いのは可視光線の中の内、青の波長が長いからだし、地球が丸いのは球形が安定した形だからだし、木が上に伸びるのは伸びる側の先端に成長細胞があるからだし、鉛筆の芯は炭素で出来ており、それが紙との摩擦でこすれて紙に残るからだよ、と今のかすみならば説明出来る。

◇が、これは父が小学生のかすみに答えた解答なので、小学生でも容易に理解出来る文章になっているのだ。これはすごい事だ。子供の知っている単語を使用し、解らないけれど必要な語彙については説明しつつ使用する。子供の頃は、わからない事は父に聞け、とばかりに質問を繰り返していたのだけれど、いちいち丁寧に答えていた父に対して実に頭の下がる思いである。

◇さて、何故この質問カード制度が出来たかと言うと、第一にかすみがどしてぼうやだったからで、さらに父が負けず嫌いだったからだったりする。かすみがどうして?と聞いた時に、父が答えられない時があったのだが、父はわからないなどという自分の中ではへたれな台詞を言うのを潔しとしなかったのである。その為、「かすみにも良くわかるように紙に書いてあげるから」などと言われ、誤魔化されたのがきっかけで、以来、聞きたい事は紙に書いて父の箪笥に載せておくという流れが出来たのである。

◇結局、父が毎週の様に図書館に連れて行ってくれる様になってから、だんだん自分で調べるという作業がメインになり、カードの質問も減って行ったが、未だにわからない事はとりあえず父に聞いてみるという癖が抜けない。父ももう還暦を迎えた事だし、この先どうしようか考えている。さらに先を読むとすると、かすみが結婚して出産すれば、半分かすみの遺伝子を持った子供が生まれる訳で、そいつがどしてぼうやになる確率は非常に高い。とりあえずカードは取って置き、父にうーんと長生きしてもらいたいと思う今日この頃である。

教訓:解らない事は意地でも調べると、なんとなく楽しい。


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