かすみ荘 - 父とわたくし:父と定年
[もどりゅ]

ACT025:父と定年(2001.05.16)


◇草の根的に我が父を応援して下さる、全国300万人の女子高生の皆様、おかげさまで父も無事に定年を迎える事が出来ました。勤続年数38年、不正もせず、贈収賄も受けず、日々日々真面目に地道に勤め上げた結果、定年後の仕事も決まりました。ありがたい事です。かすみもこれで安心して独身パラサイトを継続出来るというものです。

◇さて、今回父が再就職をすんなり決められたのは、天下のお役所定年以降の嘱託推進機能が働いたからです。こりを天下りと抜かしやがったやつがいた事は日記やらに書きましたが、そんなに羨ましいのであれば公務員になれば良かった訳ですね。例えば試験にパスすれば、高卒ならば高卒の、大卒ならば大卒の、公務員の資格が手に入った訳ですから、受けもしないでかすみにそんな事を言うやつはちょめちょめしちゃいます。

◇そんなこんなで今後の生活基盤も見通しが立ったのですが、父は何やら寂しそうでした。男性というのは、女性よりも社会的立場に固執するものです。退職してしまえば父の肩書きは嘱託、つまりパートのおじいちゃんです。第一線で働く事はもう出来ないのです。老兵は去るべしという言葉もありますが、まだまだ60歳は現役と言われながらも、役職に就くのは正規の職員なのです。退職の日が近づくに連れ、父はちょびっとづつ元気が無くなっていく様でした。

◇さて、そんな中、我々子供達はプレゼントのお金を集めました。子供達と言っても全員成人したいい大人ですが。大好きな父に、父の大好きな旅行ギフトカードを買う事にしました。

「それだったらお母さんも行けるもんね」

脇役の母も嬉しそうです。

◇パーティーをぶちかます。準備は万端、仕上げを御覧じろ、です。父の大好きな手巻き寿司ぱーちーをぶちかます為、デパートの食品売り場でお高い刺し身やら、中トロのさくやら、お吸いもの様の蛤を調達、母は母でプレゼントを用意した様です。決行日は父の退職日当日、夕飯の場をパーチー会場とする。どんな用があっても必ず、必ず、必ずや、夕刻までに家に帰宅せよとのお達しも出ました。

◇元気の無い父が帰宅しました。食事の支度はまだ途中です。サプライズ(びっくり)ぱーちーなので、父に風呂に入っていただきました。お風呂から上がって、食卓を見た父がちょびっと元気になりました。自分の為に豪華なご飯が饗されるのがお気に召したようです。

◇さて、かすみはタイミングを計っていました。プレゼントをより効果的に渡さねばなりません。最大限の感謝をしていただきたい、のだ。かすみが一生懸命働いて手に入れたおぜぜ、これを最大限に・・・。

「お父さん、これ、私達3人からのプレゼント」

「え、何だよ、そんな気にしなくてもいいのにぃ」

◇その時の父の顔は、とてもとても素晴らしい微笑みで満たされていた。その後母からのプレゼント攻撃を受けた父は、ぽつりと呟いた。

「さっき、スポーツセンター(元職場)を出た時はちょっと寂しかったけど、何か、断然嬉しくなっちゃったな」

◇いい事をしたもんだ。そう思った。例え旅行券が全部で5万円分であり、その内の2万円を弟に負担させ、姉のくせに弟より5千円少ない出資しかしていなかったとしても。ぎりぎりに帰宅して、母と妹に責められて逆切れしてしまったかすみだけれど。父は最後にこう言った。

「ギリシア旅行(夫婦で4月決行)のお土産、楽しみにしてろよ」

そりゃあもう、楽しみにしています。

教訓:小さな投資で大きな実り。


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