かすみ荘 - 父とわたくし:父と数の数え方
[もどりゅ]

ACT031:父と数の数え方(2001.06.01)


◇一見、一家団欒に見える食卓。父と母とわたくしである。今日のメニューは鯵の塩焼き。都築阪急地下の相鉄ローゼンにて一尾150円のお買い得品である。当家はすでに父が定年になり、年金生活を営んでいるので、贅沢は敵である。と建前ではなっているが、健康マニアの父から、旬の食材は体にいいんだというお達しがあった為にそうなっただけであり、元々旬というのはその食材が多く出回るのだから、単価が安くなるのは理の当然であったりする。だもんで、高い旬の食材もテーブルに並ぶ時もある。

「魚は一尾、二尾って数えるよね。でも動物は一頭二頭でしょ。頭としっぽの違いがあるのは面白いね」

◇話を振ったのはかすみ。自分ながらに発言してからしまったと思った。父の顔が悪事を企んでいる時の、時代劇に出てくるお奉行様の様になったのだ。決して金さんや大岡様では無い。

「小さい犬とかは一匹とか言うけれど、頭が正しいのか、匹でいいのか」

「え、頭?匹の原理が分からないけど」

「生物学的にはそれで良いんだろうな。じゃあ、昆虫は?」

「虫ぃ?頭でしょ。蝶とかも頭って数えるでしょ」

「さすがにわかるか。じゃあ羊羹は?」

「羊羹???えーとなんだっけ、あるよね数え方」

◇本じゃないんだ、羊羹は。違う言い方をする。ええとほら、知ってるんだよ、出て来ないだけで。

「ギブアップか?」

「ちょ、ちょっと待って」

◇えーと、ほらあれだよ、あれ。母を眺めるが母も出そうで出ないらしく、眉間にしわを寄せている。えーと、ほら、あれ、あれだもん、あれと一緒だ。あ、あ、あ!

「棹だ!箪笥と一緒、一棹!」

◇ちょっと不満そうな顔をするが、にやーりと笑う。

「じゃあ、釣竿は?」

「つーりーざーおー???」

◇これは分からない。全く持って分からない。教えて、教えて、太公望。本ではない筈だ。そんな簡単な出題を出す筈が無い。裏をかいてなどという可能性はないのだ。父は正々堂々と勝負してくる男なのである。だから難しい、普段使わない単位の筈だ。とは言えかすみの人口無能AIには何も引っかからない。疋、これは布だ、尋、これは広さだ、全然違う。うーん。

「降参」

「かん、だ」

「巻?本の?」

「いや、干すの干」

「あ、水干の干?」

「そうだ」

◇そんなもん分かる筈がなかろう。かすみの範疇外じゃ、むー。

うっほほほほ。

◇訳の分からない笑い声を上げる父。

「今回はお父さんの勝ちだな」

◇きー、むかつくわ!ただいま逆襲の作戦を練っているかすみなのだ。

教訓:使わない言葉も覚えておかないと悔しい思いをする事もある。



追記:?かん?の正しい書き方は竿で、この場合の干は略字に当たるとの事。

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