かすみ荘 - 父とわたくし:titi37
[もどりゅ]

ACT036:父と?ばか?(2001.08.27)


◇三つ子の魂100まで、とか、雀100まで踊りを忘れず、とかいう諺がある。日本人は100という単位が好きなのだろうか、何故区切りは100なのだろうか、それとも昔の人は寿命が100くらいだったのだろうか。それは無い、無い筈であるが、100までとか使っているのだから実は100以上軽く生きる民族がいたのだろうか。ミッシングリングか、おい。

◇ともかく、小さい頃に身に付いたものはいくつになっても無くならないという諺であるが、かすみも小さい頃に言い聞かされた事がある。それは?ばか?と言われたら、確実に相手を負かせ、というものである。方法はどのようなものでも良い。例えどんなに卑怯でも、表面上はクリーンで法に触れなければ良い、らしい。

◇父曰く、?ばか?というのは最低最悪の罵倒語で、これを言われたら人として失格、俺はお前を認めないと認識した事になるそうな。本人はそんな気は無くとも、この罵倒語を受け入れる様な事は決してしてはならないのだ。我が家族に?ばか?はいない、よって、?ばか?などと認識しやがるお馬鹿さんには地獄を見せてやらねばならないのだ。死して屍拾うもの無し、なのだ。

◇という訳で、小学生時代のかすみを?ばか?と罵った野郎には、直接的に背中をぶったたく、引き出しの中に馬鹿と書いた紙を入れておく、上履きを窓から放り投げる、口で挑発し叩かせ何もしていないのに打ったと先生に訴える、などとして次々屠っていったのである。中学校になってからは、かすみも大人になったので、こっそりトイレに短時間閉じ込めておどろかす、こっそり教科書を机の中からロッカーに移動させて驚かす、などというこっそりバリエーションを展開。表面上クリーンなゲリラ的活動を行った。高校時代ともなると、あ、駄目だ。高校だと時効が成立しないかも知れない。とにかく逆襲を行った。

◇とはいえ本当に父も逆襲していたのであろうか。逆襲という言葉が似合うのは、キャスバルレムダイクン様だが父には逆襲とか復讐とか、その様な言葉は似合わない。通常状態の父を見ている限りでは、真面目で、かつ、奇妙なので、実際に動いたという事はなさそうに見えるのだ。

「お父さんは?ばか?って言った人に抗議した事ある?」

「何回もある」

「言っても駄目な時は?」

「ああ、救い様の無いやつだなぁ、と思う事にしている」

「じゃあ、それで逆襲した事はないんだね」

「ある」

◇それはそれは、まだ、コピー機などが普及していなかった頃の話である。まだ、ボールペン原紙(最早実物がわからない人も多いに違いない。かすみも幼稚園でしか見た事が無いです)でガリ版とかゆう印刷機を使っていた遠いあの頃。?ばか?呼ばわりした同僚から、上司が同僚に預けた広報の原稿を失敬し隠滅した事があるらしい。悪人である。同僚はちょこっときつめにしばかれたそうなので、意外と?ばか?の代償は大きかった様だ。父よ、そりはちょっと可哀想でないか?

◇一番の問題は、その血が流れかつ、その習性が染み付いたかすみもいまだに?ばか?を憎んでおり、きっと自分に子供が出来た時に同じ事をいうであろうという事が予想される事だ。結婚後、子供を連れて実家に遊びに行くと、弟とその子供がいてかすみの子供に?ば〜か?とほざいて血の惨劇、という事もありうるのだ。

◇いや、いくらなんでも無い。多分。

教訓:子供にあまり強力な信念を植え込むのはどうかと思う。


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