かすみ荘 - 父とわたくし:titi38
[もどりゅ]

ACT037:父と盆(2001.08.27)


◇やって来ました日本の夏が。花火、縁日、ビヤホール、蚊取り線香に盆踊り。はい、太鼓のばち捌きも鮮やかに、ささ、踊りませう、踊りませう。

◇盆踊りと言うのはお盆に行うので盆踊りなのだそうな。かすみの家では7月にやってしまうので、盆踊りにはかからないので実感はあまり無い。しかも、かすみが大きくなってからはまだ帰宅していない時間にとっとと迎え火を焚いてしまい、日にちが来れば送ってしまうので、ぼーっとしていると気づかずに逃げられてしまうのだ。いや、逃げている訳ではないのか。

◇我が家の乗り物はきゅうりとなすではなくミニカー、しかも左ハンドルである。死んだばあちゃんが生前に買ったもので、10にもならないうち亡くなってしまった父の妹の為に買って来たのだ。子供だからミニカーは良いのだが、誰が運転しているのであろうか。それとも自走する車なのだろうか。なかなかホラーな設定である。

◇今年は父と母と弟とかすみの4人で迎え火を焚いた。なかなかの出席率である。我が家族は5人なので、80%だ。こういう時に%は使わないと思うがまあ良い。自走するミニカーが5メートルほど疾走し、全員が心底驚嘆したり(嘘)、焚いたおがらが折りからの風にあおられ隣家が燃え(嘘)、消した筈の火が再度燃え上がり(本当)、ちょっとした驚きを受けたとはいえ無事に祖父母と伯母を迎え入れる事が出来たのである。

◇さて、迎え火も焚いてさっさと屋内に戻り、夕飯の手伝いなぞしていると、我が家のわんわん警備隊が庭に向かって騒いでいる。どうやら外に出たいらしい。ふと見ると、両手両足を広げ、手のひらを上下上下に振っている

阿呆の様に見える

◇いかん、いかん、父を阿呆呼ばわりしては。とはいえあのひらひら具合を見るとそう感じてしまうではないか。ひらひら。それに興奮して騒ぐ犬ども。外に出て遊びたいらしいのだ。それもこれも父があんな所でご機嫌になってるからであり、戻ってくる素振りを見せないからである。わんわん隊も外に出してもらえるかも知れない、外で遊べるかも知れない、そう思っているらしい。

◇庭を周回してやっと戻って来たと思ったら、キンカンを取り出し、ぺてぺてと足や手に塗り出した。そこかしこを蚊に食われている。父は心が少年であるのだが、体温も赤ちゃん並みに高い。恐らく皮膚呼吸も活発に行われているのであろう。やたらと蚊にやられる人なのだ。かすみと父が並んでいると、父に蚊がたかってしまう。かすみの平均体温が低い(35.2)のもそれに拍車をかけている様だ。キンカンを塗り終わった父が、アンモニア臭をぷんぷんさせながら夕食を取っているので、

「お盆で仏様が帰ってくると言う事は、そのお目付け役みたいな化け物や鬼神もうろうろしてるかもねぇ」とかすみ。

「何を言っているんだ。仏様は仏様なんだから悪い事はしないぞ。だから化け物は出ないよ」

「うーん、でもさ、パチンコ交差点(パチンコ店がある交差点)で死亡事故が何回もおきてるでしょ。出るかも知れないよ。すごいのが」

「それは多分ないだろ」

◇夜、かすみが両親の寝室に洗濯物を取りに行くと、タオルケットをミイラの様にぐるぐる巻きにした父がこっちを向いた。暗い中で見るとなかなか恐い。死んだじいちゃんにそっくりなので、お棺にいれられたじいちゃんお思い出す。

「かすみー。かすみのせいでトイレに行けなくなったじゃないか」(恨みがましい声)

「何で?」

「出るかも知れん」

「いや、出ないでしょ」

「かすみ、洗面所に用は無いか。俺がトイレに入っている間外で待っていてくれ」

◇過去に狼男の映画に怯えた父の心はまだまだ健在の様である。にしても、夜中に父の用足しの音を扉越しに聞くのはちょっと何だと思う。

教訓:どの様な事であっても、人を怯えさせる様な事をするのはいけない


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