かすみ荘 - 父とわたくし:父と七味唐辛子
[もどりゅ]

ACT038:父と七味唐辛子(2001.08.27)


◇浅草は新仲見世通りに?やげん堀?という店がある。大変有名な店なのだが、知らない人が見たらびっくりするような店舗である。二間間口ほどの小さなお店で、右側にふりかけやらお茶漬けのパックがあり、左側には7種類の香辛料を備えたカウンタがある。そう、ここは七味唐辛子の店なのだ。

◇こちら関東では?しちみとうがらし?と読み、関西では?なないろとうがらし?と言うのだよ、と父は語る。なかなか胡散臭いいいっぷりが素晴らしい。本当にそうなのであろうか。まあ、父の言う事なので間違っていないだろう、多分。

◇我が家の七味唐辛子はここ、浅草のやげん掘の中辛と決まっている。この店で扱っている七味唐辛子は中辛と大辛の2種類で、20gと30g入りになっている、と思う。なぜ思うという風に歯切れが悪いのかというと、かすみはいつも「中辛、30g」と言い切ってしまうからである。さらにここに追加の台詞がある。

「中辛、30gで柑皮とケシの実大目でお願いします」

◇そう、ここでは配合を注文出来るのだ。観光客の方や、初めていらっしゃる方が、どうやって買えば良いかとちょっと戸惑っている所で、ぽん、と言うとなかなか格好良いとかすみは内心思っているのだ。別に誰も気にしちゃいないのだろうけれど。そうやって手に入れた七味唐辛子を持って帰り、500円と交換で母に渡す。かすみは激甘党で七味唐辛子など使わないので、おごりにはしない。ただし、消費税25円はおごる。

◇さて、この七味唐辛子、父はお味噌汁に入れたり、漬物につけたりして食べている。このお味噌汁であるが、過去の父と私に書いた(父と健康)のだけれど、黒酢が混入されている。そこに七味唐辛子を入れているのだから、すっぱ辛いお味噌汁と言うものを飲んでいる事になるのだ。それに漬物につけたら辛すぎる様な気もするのだが、父曰く、

「俺は辛いのが大好きだ。それに唐辛子の辛さは醤油などとは違うので体に悪くない。むしろ唐辛子に含まれるカプサイシンは体に良いんだ」との事。

◇その日の夕ご飯は、白米、シチュー、サラダ、漬物だったのだけれど、父はいつもの癖で七味唐辛子を取り、シチューの中へ。一瞬しまった、という顔をしたので、

「お父さん、コショウ入れたかったんでしょ」

「う(ちょっと悔しそう)、違うぞ、違うぞ、これからはコショウと七味を入れる事にした。唐辛子効果で健康になるんだ」

◇そこまで意地を張らずとも・・・、と思ったが、何事も無かったような顔をする父の横で母が、

「私の味付けが不味いのね」

「違う、ただ唐辛子の効果が」

「だからって全然風味の違うものを入れなくても良いでしょう」

「いや、だから、ほら、そうだ、かすみが悪い」

「何でぇ」

「わざわざ聞いたからだ」

「だってさぁ、入れたから聞いたのに」

「お母さんがいけないみたいになったから、かすみが悪い。お父さんはお母さんの味方だ」

◇うまい事逃げやがるものである。

教訓:愛する奥さんと娘、選択するなら我侭を通せる奥さん。


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