かすみ荘 - 父とわたくし:いあいあ、くとゔぁ。
[もどりゅ]

ACT040:父とバーベキュー(2001.08.31)


◇ベランダでバーベキューは母の長年の夢だったらしい。かすみが高校生だった時に、それまでの木造建築からセキスイユニットに家を建て替えたのだけれど、その際にベランダの一部をわざと広くとって、白い丸テーブルと、椅子を置いたのである。かすみのイメージでは白いテーブルセットは芝生に鎮座すべきであり、そこには高級そうな、こりゃあとっぷぶりぃだぁから譲り受けたに違いないと思える様なわんこがはべっていなくてはならない。どの様な番組や本からその様な寄っている思考を植え付けられたかは、自分ながらにわからないけれど。

◇実際に家を建て替えてから、バーベキューもプライベートビアホールも行われないまま、時が過ぎていった。一度だけあちきが夏に小麦色の肌に焼くべく(海が怖いので陸でお手軽に焼こうとした)、オイルを塗ってシートに寝そべってごろごろした事がある。それにより、ちょっとした学習をした。皮膚の弱い人間は焼いてはいけないと言う事と、体力の無い人間は夏の炎天下で直接焼くと、脱水症状まっしぐらと言う事。動けなくなった自分に気がついたとき、ああ、死ぬかも知れない。死ぬ前にコスプレの衣装を捨てないといかんなぁ、などと思ったものです。結局ベランダの蛇口に手が伸びて、復活。火傷をしていたのがちょっとなさけなひ。(妹はベランダで焼いても平気だったのに)

◇今回は、かすみの弟が結婚する事になったので、これを機会にさよなら弟、バーベキューぱーちーをぶちかまそうと言う事になったのです。嬉々として母の買い物について行く父、バーベキューセットを出す父、ちゃぶ台を運ぶ父、クーラーボックスを出す父。父よ、家でやるバーベキューに何故わざわざクーラーボックスを使う。しかも保冷材入れすぎ。

◇ばたばたと用意して、いざ、炭火バーベキュー開始。下戸のかすみ以外、アルコールで乾杯。かすみも寂しく麦茶で乾杯。コンロの足の下には湿らせた新聞紙。レンガを敷けば良かったねというかすみの提案に、遅ればせながら大賛成して、レンガを持って来ようとする父。父よ、すでに火の起こっているコンロを動かすのは危ないと思うのだ。家族揃って止める。

◇新聞紙は時々如雨露で湿らせる(そうしないと燃える)事にして、早速肉を焼く。

「俺は焼肉奉行だ」

と、父はほざき、各自が焼いている肉をぐいぐいとひっくり返し始めた。しかも、ビール200ml程度で酔ったらしく、顔は真っ赤で、もともと我を通す所があるのだけれど、さらに人の話を聞かない。

「お父さん、あたしの肉を押さないでよぉ」

「これくらいでひっくり返した方がいいんだ。お父さんに任せておけ」

「やだよ、さわんないでよ」

「大丈夫だ、俺が焼いてやる」

まったく大丈夫では無い。常々、父はかすみの妹が可愛くてしかたがないらしく、特に妹の世話を焼きたくて仕方が無い様だ。確かに、いつまで立っても親から見れば子供は可愛いというし、父からすればついこの間まで一緒にお風呂に入ったり、「お父さんお腹空いた」などと訴えていたイメージがあるのだから、酔っ払ってご機嫌の父からすれば、可愛い娘の肉を俺が焼かずに誰が焼くのだ、と意気込んで当然なのだろう。がつがつと可愛い末娘の為に肉を焼く父と、表面的には抵抗するがそれは父が嬉しがるからとわかっていて騒ぐ妹。良かった、自分が長女で。

◇さて、かすみの経験からするとバーベキューというものは、2種類に分かれる。肉など食べ物ががあまってしまうか、足りなくなってしまうか、だ。丁度いいねぇ、という事に遭遇した事が無い。うう、食べ足りないとぼやきつつ、ファミレスで2次会になったり、焼きそばが大量に余ってしまい、押し付けあったり、その様な光景が展開されるのだ。今回も、肉が余り、焼きそばは焼かず(次の日の昼食になった)、野菜が余り、となったのだが、自称焼肉奉行はその様な事は許さない。お腹の皮が破れるまで食べさせるつもりなのである。

「ねぇねぇ、おもち食べない?」と母。

餅である。炭水化物なのである。腹に貯まるのである。

「いや、お餅は・・・」

「うるさい、お母さんの言う事は聞け」

餅を人数分より多く網に載せる父。餅が爆発しないように箸で穴を開け、妹に文句を言われる父。挙句コップを口に挟んで、

「くけぇ」

◇鳴きだした。イメージ怪鳥なのであろうか。調子に乗って、くけぇ、くけぇ、と鳴く。

「寝る」

◇ベランダの隣の部屋。今は肉などが置いてあるが、通常は両親の寝室である和室で、ごろりと寝転ぶ。腕がぶらぶらと宙に浮いていて、硬直した死体の様な所がちょっとぷりてぃ。寝る、といいつつも、睡眠をとる気はないらしく、くけぇ、くけぇと鳴いている。だからもういいってば。

◇最後の片付けになったとたん、元気に復活する父。

「炭はな、水にじゅって一瞬漬けると良いんだ。火種に使える様になるから」

弟に火の用心を命じてちゃぶ台などを嬉々として運び出す父。

「こんなに楽しいならまたやらなければな。どうだ、かすみ、結婚しないか?」

結婚という理由が無くても出来るのだが、結婚というイベントにご執心らしい。へへへ、と笑うと父は、

「くけぇ」

と鳴いた。

教訓:冬に鍋奉行を行う者の中には、夏には鍋奉行を行う者もいる。


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