かすみ荘 - 父とわたくし:某有名遊園地
[もどりゅ]

ACT044:父とねずみぃし〜:ベイブリッジは遠かった、の巻(2001.10.15)


◇潜水艦を下船すると、あたりは薄暗闇に包まれていた。そろそろ帰ろうか、といった雰囲気ではあるが、妹の言葉で話は変わった。

「ううちゃん花火見たい」

◇父はううちゃんに弱いのだ。どれくらい弱いかと言うと、車で来たいと言われた為に車を出し、ピラミッド探検の2時間待ちにも臆せず、いい歳をしてカルーセルに乗る娘に向かって極上の笑顔で手を振る程に。

◇レンガ造りの町並みをぷらぷらと歩きながら、花火が見れる所まで行くと、最早内海の周りは有象無象の人だかりであった。広場の脇にワゴンがあったので、早速そこに妹とかすみで飛びついた。そう、かすみはねずみ〜が嫌いなくせに、そこにある帽子が欲しかったのだ。帽子帽子帽子〜、かすみは帽子が大好きよ〜ん。

「ううちゃん、これこれ、これが欲しいなり。オープン記念帽子〜。どうかな、どうかな?」「かすみ、それ、いくらするんだ?」「1900円〜」「かすみちゃん、安いじゃん、買いなよ」「駄目だ!」

◇父曰く、数千円もする帽子など買った所で此処でしか被れない、買うのは無駄だとの事。数千円と言われると4,5千円のイメージになりますが、実際は2千円です。ですが、ですが、父の意向を無視すると、どんな目にあうかわかりません。大人しく帽子を棚に。

◇その後、休憩を兼ねて、広場の端っこのテーブルでお茶。水上花火が上がりだしました。ううちゃんが浮かれてあちこち移動しながら花火を見ています。それを見て父が呟く。

「幸せだなぁ〜。こうやって家族で楽しく過ごせるのは幸せだ」

雄三・加山の様です。しわしわだなぁ、ぼかぁこうして君と二人でいると、とってもしわしわなんだ、わかるかい?わかりません。

◇花火も見たので速攻車へ。が、他の人もぞくぞくと車に向かっている。このままではねずみぃ〜渋滞に嵌ってしまうではないですか、ないですか、ないですか、で、嵌る。駐車場から幹線道路に向かう道は、ねずみぃの周りをぐるりと廻らされるという代物。逆にぬけられれば、高速のインターはすぐであるのに、広いねずみぃの敷地をぐるりと周回させられる上、ほとんど車が動かない。

◇父が、ぶりぶりと文句をいいたれ始めたので、車内は徐々に重苦しい雰囲気に。

「だから俺は早く出た方が良いって言ったんだ」←最後の方に一回言っただけ。

「こんなに混んでいるなら車で来なければ良かったんだ」←でも車を出すと決断したのは父。

「花火を見たのがいけないんだ」←浮かれていたくせに。

◇父の話を総合すると、ううちゃんが悪人になっているらしい。これだから短気な人間は困るのだ。仕方が無いので、かすみがくっだらない話を持ちかける。「漢字の北に瓜と書いて何と読むでしょうか?」「東雲と書いて、何故しののめと読むのでしょうか?」「ヘクトパスカルとは何の単位でしょうか?」

◇負けず嫌いの父が言われっぱなしの筈が無く、「蜘蛛は昆虫であるか、そうでなければ種類は?」「北、南、各半球の台風の巻きの向きは?」「マロニエとは日本語で何?」

◇この不毛な戦いに母と妹が巻き込まれ、かすみ家雑学キングの座を賭けて戦う父と娘を見守る。時々、フジテレビだよとか、パレットタウンが見えるとか、臨海公演だよとかの声をかけるが、それでも雑学披露大会は止まらない。駐車場を出て1時間で何とか高速に乗り、やや遅めの等速で走っている車の波に乗っても止まらない。ベイブリッジが見えた時、車に乗ってから2時間が経過していたのだ。そして、かすみはベイブリッジを見た瞬間、寝こけてしまったのである。

◇ふと気がつくと、家の前で車が車庫入れ中。雑学キングは父と言う事で終わっていたらしい。眠っていたかすみが回答出来なかったからという素晴らしく理不尽な理由で。

◇翌日、朝の挨拶をしたかすみに父が言った。

「昨日は帰りに機嫌が悪くなって悪かったな。折角出かけたんだから、お父さんも最後まで楽しくしなくちゃいけなかったな。反省」

◇反省、らしい。ちなみに、欲しかった帽子は翌日にもねずみぃし〜に出かけた妹に買ってきて貰って、父にちょっとばかりあきれられたが、その父が浮かれてその帽子を被り、奇妙な動きを始めた時はやっぱり父だなぁとしみじみ思ったりもした。その後、思い出した様に「パイ、食べたかったな〜」と妹に訴えていた。

教訓:すぐにいらいらする人には、夢中になれる会話ネタを用意して置いた方が良い。


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