かすみ荘 - 父とわたくし:いっそ入院してしまへ
[もどりゅ]

ACT046:父と靭帯損傷(2001.10.29)


◇母が病気で倒れた翌々日、朝から父はハイテンションだった。犬の散歩に出るべく起きかけたかすみに、

「かすみは寝てていいぞ、ううと散歩に行くからな。ご飯は作っておいてくれ」

と言って、ううちゃんと家を出て行った。無論、犬を連れて。妹であるううちゃんは、出勤時間が早く、帰りが遅いので、お散歩を担当してくれる事になった様だ。これで朝の仕事が一つ減ったのである。ありがたや、ありがたや。

◇などと感謝するのは早計であった。かすみがぬかみそをかき回し、塩を掏り込んだきゅうりを漬け込もうとしているその時、

「痛てぇ〜」

と悲鳴をあげながら父が帰宅したのであった。

◇父はそのまま、よたよたと階段を上がり、どうやら寝室に転がり込んだ模様である。母の心配する声が聞こえる。玄関には足を拭かれるのを待っているわんこ2匹と、そのわんこの首輪をはずしている妹が残された。このままではわんこの足を拭くのに難儀であろうから、かすみも手を洗ってわんこの足拭きを手伝う事にした。

◇ううちゃんの証言に寄れば、父はご機嫌で歩いていたのである。どれくらいご機嫌かと言うと、何故か有楽町で会いましょうを歌いながら歩いていたくらいで、実に恥ずかしい思いをしたらしい。にしても、どうして有楽町なのだろうか、謎だ。

◇ところが、急に剛太君(犬、年齢3歳)が方向転換をしたので、そのまま転倒してしまったのだそうな。剛太君は有楽町が嫌いなのやも知れぬ。で、転倒時の転倒っぷりはすさまじく、ううちゃんの見解としては空を飛んだ、らしい。父よ、どの様な転び方をしたのですか。

◇その日、母の再検査があったので、ついでに父も整形外科の外来へ。かすみが出社して昼過ぎに電話をかけると靭帯損傷なる診断を聞かされた。夕刻、家に帰ると父が犬の散歩に出るべく待機していた。足が大変痛いのだが、母が出かけられないので仕方が無い。お父さんは怪我を押して散歩に出るから、かすみにも協力して欲しいという事を言う。協力も何も、ぶっ倒れてからこちら、家事も散歩もやっているじゃないか、という言葉を飲み込んでいると、

「でね、お父さん、足が痛いから剛太をかすみちゃんやってくれる?」

◇翌日、もともと腰を痛めているううちゃんと毎日の朝の散歩係りに任命されたかすみは、剛太のリードを握って、剛太に振り回されつつ散歩をした。ううちゃんは剛太を散歩させられないのだ。夕方に父と行う散歩でも剛太係りにも任命されたのも言うまでも無く、さらにさらにかすみの負担は増えていくのであった。しかも、3日目にしてかすみの膝が痛くなったのだが、父に訴えても我慢してくれで済まされている。可哀想な俺。

◇現在、父は散歩に行けなくなっただけではなく、おつかいも行けないと主張している。別に行かなくても構わないのだが、毎日かすみの帰りを待っていられるので辛い日々だ。それでも、かすみに気を使ってか、シュークリームなんぞを買って来てくれた。が、かすみが具合が悪いという事を認めてくれない。認めた場合、我が家が破綻してしまうかららしいよ、と母が言う。

「あれでもお父さん、かすみちゃんに感謝してるんだよ。毎日誉めてるもん」

◇誉められているらしい。そんな事より早く治って頂ければそれに越した事は無いのだけれど…。まだまだかすみの受難は続くらしい。

教訓:60過ぎたら散歩にも注意した方がいいらしい。


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