かすみ荘 - 父とわたくし:仕事嫌なんだって。
[もどりゅ]

ACT052:父と夢の一千万(2001.12.18)


◇今年はさらに億万長者が増えるらしい。興味のある方はすぐにぴんと来たかと思われるけれど、そう、夢のでか、である。ドリームジャンボ宝くじ。どれ位のビッグなドリームかというと、一等に当選する確率が、人が一生にありうる可能性の高さで考えると、車に轢かれて死ぬ方が高いくらい夢の様な確率の話である。つまり、当たる、という事に縁がある場合、宝くじよりも先に車に当たる方が早いのではないかと。うみゅ、いきなりお先真っ暗である。

◇そんな理由から、かすみは宝くじを買わない事にしていた。していたというのは、今回、ふらふらと買ってしまったからである。5枚。発売日の当日、朝も早くから駅前の銀行で父と同じくらいの年齢の方が一生懸命売っているである。いつもは営業していない時間なのに、本日発売のでっかい夢の宝くじを売る為に、お店を開いているのだ。優しそうなご年配の方に弱いかすみとしては買わねばなるまいまい、と思っちゃったのです。だって、早朝から宝くじを売っているのですよ。この寒空の下で、ワイシャツに薄手のパーカーとはっぴで。寒いって、確実に寒いって。

◇そんなおじさまのがんばりを見て、つい買ってしまった宝くじなのですが、裏をひょいっと見てみると、この宝くじが1等である2億円に変わる可能性は、1000万分の1である事が判明した。今ひとつぴんと来ないが、一円玉を一千万円分用意して、その中に両方とも表の一円玉を1枚だけ混ぜ込んで、そいつを1回でえいって引き当てるという離れ技(しかもその山を見ないで)くらいのイメージではどうか、自分。うみゅ、その様なものでよいぞ、自分。

◇そんなこんなで普段は買わない宝くじを買ったのは良いけれど、そのままにしておくと、抽選日やら発表日やらには無くしてしまいそうだったので、リビングの壁に画鋲で磔の刑に処した。実に当たりそうもない状態である。予定としては1万円が二本当たる宝くじ、と想定したので、当たった場合、後1万円を追加して、カウンタのお寿司屋さんに行こうと思っていたりするのだ。

◇その、かすみの宝くじを父が発見した。

「これ、誰の宝くじだ?」
「私〜」
「そっか、あのな、あのな、一千万円当たったら、お父さんに全部くれ」
「何で」
「いいじゃないか、くれたらその中から10万やる」

◇父曰く、同じ話を母にしたら、鼻にも引っ掛けられなかったそうな。勿論、こんな条件を飲む人間はそうそういないのではないだろうか。

「お父さん、もう働きたくないんだ。だけどお母さんが働けって。でさ、今の年収(定年後の再就職の賃金)が200万なんだ。だから,4年で800万だろ、そしたら200万で税金払ったりするんだ。だから一千万くれ。御礼はするから、10万。しかも、その後10年くら感謝する」

◇年収200万といっても、働いている分の賃金について、である。この他に年金というものが出ているのは言うまでも無い。かすみのびっくり低賃金と比べれば、決して少ないは無い。まあ、かすみの給料が安すぎるという話もあるのだけれど。

◇結局、あまりにもしつこいので要求を受け入れたかすみ。宝くじの裏面をよく読むと、1等2億円、2等1億円、と来て、3等はぐっと下がって100万円であった。つまり、1等か2等、もしくは1等の前後の番号(5千万)に当選しない限り、父は1千万円を手にする事は出来ないのである。

◇にも関わらず、父は「前後賞でもかすみは4千万かぁ、いいなあ、お父さんなんか1千万円で我慢だぞ」などと訳のわからないことを嬉しそうに言っている。

◇「自分で買えば良いのに」と言う母に対して「そんな当たらないものを買うお金は無い」と言い切る父。なのに、家族が当たった場合、お金を請求するのだ。しかも、自分が働くのはもう嫌だけれど、旅行にいったり美味しいものを食べたりする生活は続けたいという理由で。

◇さて、かすみ、母からこの様な事を言われた。「かすみちゃんが宝くじに当たって、お父さんに1千万円あげたら、毎日傍で面倒を見なくちゃいけなくなるから、お母さんは恨むよ」

◇恨まれたり、感謝されたり、お金は魔物なんだなぁ、と当たってもいない宝くじで騒ぐ我が家である。

教訓:あちらを立てればこちらが立たず。そう言う事はままある。


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