かすみ荘 - 父とわたくし:本当に効いているのか不明
[もどりゅ]

ACT061:父とマイナスイオン(2002.04.19)


◇今年の春先、妹が会社から帰るなりカラフルなパンフレットを放ってよこした。「パパ買って」と一言言い放ち、そのまま自分の部屋に行ってしまう。お洒落さんな妹は外出着と部屋着がちゃんと違うのだ。外ではお洒落さんであるが、家ではジャージカジュアル、略してジャジカジだそうで。何だそりは。ちなみにかすみはお仕事に行く時、ちゃんと開発のルールに乗っ取って、シャツにパンツ、リュック搭載である。家ではパジャマかそれに順ずる部屋着、時々父に妙齢の女性としてどうか、問われたりもします。曰く「だから嫁の貰い手が無い」のだそうで。別に大丈夫だも。お見合いして相手をだまくらかせばいいんだも。嘘です、騙せません。

◇パンフレットには?心地よい住まいと空間?というキャッチコピーがついていて、商品の写真がどーんと載っている。商品そのものは大したものではなく、空気清浄機であった。パンフレットの言葉によると、空気清浄機をつければ、お部屋はすっかり爽やかで、花粉症なんかも寄って来ない、ペットの臭いも強力排除、これ一つで、ご家庭に大満足が訪れる、らしい。本当か?

◇前々から鼻の良い父は、室内で飼っている自分の可愛いわんこの臭いを気にして、空気清浄機を買いたがっていたので、妹がこのお買い得パンフレットを持って帰って来た事に飛びついたのだった。値段も決して安くなかったと思う(7万位だったか。かすみ全く興味なし)。それでも父は自分の貯めている貯金をおろして、我が家に空気清浄機が鎮座まします事になった。

「かすみ、かすみ、動いてるぞ、いいだろ、な、いいだろ」
「お父さん、動かなかったら困るでしょ」
「いや、あのな、ここにコントローラーがあるだろ。ここのボタンをな、押すと・・・」
「押すと?」
「どうなると思う?」
「知らない」
「付き合い悪いなぁ、少しは考えたらどうだ。で、さあ、何だ」
「スイッチが入る」
「それは電源だろ。そうじゃなくてここだよ、このボタン」
「さあ」
「知りたい?」
「いや別にどっちでも」
「知りたいだろ」
「だからどっちでも」
「そっか、知りたいか、どうしようかな。でも可愛い娘だから教えてやる」
 解らなくてもいいって言ってるのに。
「マイナスイオンが発生するんだ」
「ふうううううううううん」
「凄いだろ、マイナスイオンだぞ。イオンってわかるか、イオン」
「電子」
「じゃあスイッチ入れてやるからな」
 聞いてそれかい。しかも恩着せがましく入れてやると言うのか、貴方は。
?ぴろりろ〜?
「凄いだろ、凄いだろ、イオンが出てるんだ、イオンが」
「ふうううううううううん」
「それでな、臭いをばんばん取っている時は、此処のランプがオレンジ色になるんだ。凄いだろ」
「凄いね」
「あー、いいもの買った。かすみ、お前もこういう有意義事に金を使え」

◇後日、帰宅すると焼いた鯵の開きを載せた皿を掲げた父が、空気清浄機の周りをうろついていた。実に不審人物である。恐らく、空気清浄機の働きっぷりを確認しているのであろう。が、夕食(だと思われる)の鯵の開きを掲げて、あちらこちらに皿を移動させるのは、実に胡乱なので止めていただきたい。さらに見ていると、今度はじりじりと後退し始めた。どうやらどの程度まで脱臭機能が働くか知りたいらしい。

◇着替えて食卓に着くと、父は早速先程の実験結果を話し出し、最後にこう言って話を締めくくった。
 「次はくさやで実験してみようと思う」

◇くさやが大嫌いな母と父の間で、軽い言い争いが起こり、消化に悪そうねと思いつつも、いつもの事なので気にせず鯵の干物をおかずに夕食を食べるかすみ。結局、父が押し切ったので近々我が家では、くさやをぶら下げた胡乱な父が見られるらしい。

教訓:何事も実験。


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