かすみ荘 - 父とわたくし:君の瞳に恋してるをkasumiは踊りました。
[もどりゅ]

ACT068:父とフォークダンス(2002.07.01)


◇先日、我が家の末娘、自称地元のアイドルううちゃんが会社から帰って来てからこう聞いてきた。
 「kasumiちゃん、ジンギスカンと言ったら何?」
 「北海道の羊料理。激美味」
 「何、げきびみって?」
 「激烈に美味しい」
 「うーん、そうじゃなくて」
 「フォークダンスか、70年〜80年代のディスコ」

◇ううちゃんいわく、仕事場で何故かジンギスカンの話題になったのだそうな。このジンギスカンは音楽で、少なくとも羊料理では無い。そこで、ううちゃん以外の職場の人は、皆、ディスコソングであると言って来たという。ううちゃんにとってはフォークダンス曲。小学校や中学校で、かなり激しい振り付けを延々繰り返し、しかも、フォークダンスとしては異色ともいえる、誰とも手を繋いだりしない、一人で踊る曲であると認識されているのだ。ところが、職場の皆様は、ううちゃんよりちょいと年が上でいらっさるので、ジンギスカンはディスコソングという認識になっている。その為、ううちゃんは皆にあんな曲でフォークダンスを踊るなんておかしいと言われまくったのだそうな。

◇kasumiとううちゃんが話をしていると、母がふと呟いた。
 「そういえば、お父さんはフォークダンス嫌いなのよね。
話を受けた父が、うんうんと頷く。
 「何で?」
 「かっこ悪いからだ」
 「フォークダンスが?」
 「フォークダンスを踊る僕が、だ」
 「別にフォークダンスは皆でやるから目立たないでしょ」
 「そこがお父さんの格好つけたがる所よ」と、母。

◇父は、生まれてこの方、フォークダンスを踊った事が一度も無いのだそうな。その為に、色々な策を練り、かつ敢行したらしい。例えば、放送委員会に入って、音楽を流す方になってみたり、突然腹痛を訴えてみたり、学級委員になって忙しくて出来ないと言い訳をしたり、体育祭実行委員になってみたり、体育の授業を保健室でやり過ごしたり、しかしながらどんなに面倒になっても、フォークダンスを踊る位なら面倒を片付ける方が良い、と言い切る父。
 「一体何でそこまで嫌なの?」
 「かっこ悪いからだ」
 「確かに、フォークダンスってさほど格好の良いものじゃないけどさ」
 「出来ないからだ」
 「フォークダンスが?」
 「スキップが、だ」

◇スキップが出来ないのだ。スキップが出来ないだけではなく、ツーステップも、ギャロップも出来ないと言う。つまり、スキップが出来ない事により、おたおたする自分を見られると言う屈辱を気にする余り、フォークダンスの踊れない体になってしまったのだと言う。では、スキップもツーステップもギャロップも無い、マイムマイムではどうかと聞くと、
 「あの横移動が出来ない」
 「出来ないと思っているだけじゃないの?」
 「いや、こっそりやってみた事がある。駄目だった」

◇父はこっそりマイムマイムの練習をしたのだそうだ。寂しいぞ、一人マイムマイム。学校の中でも文学少年、文学青年な二枚目と言われた父が、一人寂しくマイムマイム。てろりろり、てろりら、てろりらり、てろり〜。両手を広げて一人マイムマイム。

◇と、ううちゃんが突然その場でスキップを開始した。
 「パパ、ほらほら、そんなに難しくないよ」
と、母までがその場でスキップを始めるではないか。
 「ほらほら、kasumiちゃんも」
ううちゃん、母よ、あなた達は一家でスキップをしたいのですか?しかも家の中で、父を囲んで?こりは変な儀式なのですか?教えて下さい。
 「早く!」
二人の険しい視線に仕方が無くkasumiも、チームすきっぷの参加を始めた所、
 「僕はやらないぞ!皆でそうやってスキップをするがいい。でも一生スキップを、フォークダンスをしないと心に誓ったんだ!」
父よ、貴方の誓いは何か違う様な気がするのですが如何なものか。

◇のち、kasumiがううちゃんに、
 「ううちゃんの結婚式に、お父さんと最後のダンスとして、参加者全員でオクラホマミキサーを躍るというイベントを企画してみては?」
 「そっか、そしたらパパ、踊ってくれ・・・」
 「嫌だ」
 「ううちゃんの頼みでも?」
 「それだけは嫌だ」
 「一生に一度の頼みでも?」
 「本当にううはそんな事やりたいのか?」
ううちゃん、黙る。確かにね。kasumiも嫌だな、そんな披露宴。

◇こうして、父の生まれてこの方フォークダンスを踊った事が無い記録は、未来へと伸びていく。どなたか、上手くステップを踏める方法をご存知の方、父と踊っていただけませんか?

教訓:格好悪い事をする位なら面倒な裏方を選ぶ手もある。


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